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【社会】

<原発のない国へ 再生エネの岐路> (1)屋根発電 秘めた力

自宅に設置した太陽光発電設備について話す高柳良大さん=東京都国分寺市で(芹沢純生撮影)

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 余った電気を、どこに売ろうか−。東京都国分寺市の会社員高柳良大(よしひろ)さん(53)は、今年十一月に向けて悩んでいる。

 二十年ほど前に家を建て、屋根に太陽光パネルを敷いた。発電した分を自宅で使い、余りを東京電力に売ってきた。価格は一キロワット時当たり四十八円。二〇〇九年に国が再生可能エネルギーの普及に向け、期間を十年間に限定して固定価格で買い取るFIT制度を始めた時に定めた。

 環境に優しく、しかもお得。だが、十一月に買い取り保証期間が終わる。その後、高柳さんは余った電気の売り先を自分で見つける必要がある。

 経済産業省資源エネルギー庁によると、高柳さんと同じように年内に買い取り期間の満期を迎える住宅用太陽光発電は、全国で約五十三万軒。「小さな発電所」の総出力は二百万キロワットと、標準的な原発二基分だ。電気を売り始めた時期により順次満期となっていき、二三年までの累計で百六十五万軒。総出力は六百七十万キロワットにも及ぶ。

 この状況を業界関係者は「太陽光発電の二〇一九年問題」と呼ぶ。家の屋根で生まれる電気を巡り、大手電力と、自前で発電所を持たない新電力との争奪戦が静かに始まりつつある。

 「業界最高値級の買い取り価格」。水戸市に本社を置く新電力「スマートテック」は、ホームページに宣伝文句を掲げる。昨年六月、どこよりも先駆けて、二一年三月までにFITを終える人向けに「一キロワット時十円」と公表した。

 「薄利だが、ある程度の採算は見込める」と今泉嘉之経営企画室長。既に関東のほか、九州からも申し込みがある。「びっくりした。九州電力が、太陽光発電を停止させる出力制御をしたせいかもしれない」

 東電など大手は四〜六月に価格を公表予定で、東京ガスなども名乗りを上げる。業界団体の太陽光発電協会(東京)の担当者は「各社まだ様子見の段階」とし、電力市場の動向から一キロワット時十円前後になるとみる。

 買い取りを続けてきた大手電力は顧客情報を握っている分、新電力よりも優位。ただ、今泉室長は「価格は大手にもひけを取らないだろう」と強気だ。「再生エネの電気だからこそ買いたいという企業に供給して、利益を得たい」。そのためには住宅用太陽光の獲得が不可欠という。

 電気を売る側の動向が、新電力業界を左右する時代が来る。太陽光に取り組む個人ら約二千五百人が参加するNPO法人太陽光発電所ネットワーク(東京)の都筑(つづく)建代表理事(76)は「FIT価格の高さで太陽光を始めた人もいると思うが、電気をつくりながら使う『プロシューマー(消費・生産者)』の意識が必要となってくる」と説く。

 冒頭の高柳さんは、地球温暖化への関心から太陽光発電を始めた。「再生エネを推進する新電力を応援したい。蓄電池を買い、昼にためた電気を夜に使うのも面白いかも」。屋根のパネルを見ながら笑った。 (松尾博史)

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 国の全面的な後押しで進んできた再生エネが、岐路に立っている。クリーンな電源は主力になれるのか。課題を探った。

 

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