東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<原発のない国へ 再生エネの岐路> (3)洋上風力 追い風を待つ

政府、目標値示さず導入遅れ

写真

 太平洋に突き出した千葉県銚子市の犬若(いぬわか)漁港から、海原に巨大な風車がくっきり見える。一月一日に商業運転を始めたばかりの東京電力銚子沖洋上風力発電所。沖合三キロにあり、海面からの高さは八十メートル。〇・二四万キロワットの出力は原発に比べて桁違いに小さいが、東電にとって大きな一歩だ。

 海に風車を立てて電気をつくる洋上風力発電が、欧州で急速に広がっている。海なら陸上よりも大きな風車を設置でき、強い風が安定して吹くため、効率良く発電できる。住民が騒音に悩まされることもない。東電は二〇一三年から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と実証試験に取り組んだ。

 設備が台風や塩害、八年前に起きた規模の津波にも耐えられると分かり、東電は銚子沖を、風車を並べる「ウインドファーム」の有望地と判断した。地元、銚子市漁業協同組合の大塚憲一常務理事も「風車の周りに新たな漁場ができた例もある」と理解を示す。

 福島第一原発事故の収束という難題を抱える東電は、再生可能エネルギーに軸足を移そうとしている。洋上風力だけで原発三基分の最大三百万キロワットを目指す。一月十八日には、洋上風力の先端企業アーステッド社(デンマーク)と手を組んだ。東電の小早川智明社長は記者会見で「銚子沖での実現に、より近づくと確信している」と意気込んだ。

 先進的な英国では一七年時点で、計七百万キロワット近くの洋上風力を導入済みだ。同様に海に囲まれている日本では足踏みが続き、まだ二万キロワットにとどまる。

 原発事故後に福島県沖で始まった実証試験では、三基のうち最大の風車(〇・七万キロワット)はほとんど動かなかった。原発も手掛ける三菱重工業の製造だが、機器の不具合が続発。特注の部品交換が頻繁に必要となり、採算が合わずに撤去が決まった。残り二基を造った日立製作所も、風車の製造からは撤退する意向だ。

 大手メーカーが出遅れている影響もあり、日本の洋上風力はまだ、追い風が吹いているとは言いがたい。沖合の海域を長期間使うための法整備も、昨秋の臨時国会でようやく実現した。

 民間の事業計画で環境への影響評価(アセスメント)手続きに入っているのは全国で十三カ所、計約五百四十万キロワットで、それでも英国に届かない。業界団体の日本風力発電協会(東京)の上田悦紀(よしのり)国際・広報部長は「現状ではアセスだけで四〜五年かかる。手続きの効率化が必要だ」と訴える。

 工事の面でもハードルは高い。経済産業省資源エネルギー庁の担当者は、油田開発が盛んな欧州に比べ、国内では洋上での作業経験が豊富な事業者が少ない点を挙げる。最大級の〇・八万キロワット級風車では、柱の長さが九十メートル、羽根は一枚八十メートル、重さはそれぞれ四百トンもある。これらを海に出すための港も整っていない。

 風力発電協会は三〇年に一千万キロワット、五〇年に三千七百万キロワットの導入目標を掲げる。その規模は国内の全原発(約三千八百五十万キロワット)に匹敵する。国は洋上風力について目標値を示していない。上田部長は「投資を呼び込むためにも、意欲的な目標を示すべきだ」と話した。 (宮尾幹成)

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報