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【社会】

豚コレラ拡大 感染、見極め難しく

豚コレラが広がる発端となった養豚場で進む防疫作業=7日、愛知県豊田市で

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 豚コレラの感染は五府県に拡大した。愛知県によると、感染が確定した豊田市の養豚場は、一週間ほど前から体調不良の豚を確認していたにもかかわらず出荷を続け、結果的に感染が広がった。養豚関係者らからは「早く防げなかったのか」と疑問の声が上がるが、豚の症状を見極めるのは難しいとの指摘もある。 (中崎裕、中尾吟、安藤孝憲、板倉陽佑)

 愛知県が豊田市の養豚場から異常を知らせる連絡を受けたのは四日。県は感染症を疑いつつも、詳細な検査は翌五日に回し、長野県の養豚場への出荷を止められなかった。同県の養豚関係者は「感染症の疑いがあったなら移動をやめてほしかった」と不満を漏らす。

 北海道大大学院の迫田義博教授(ウイルス学)は「(四日に)県が感染症を疑った時点で、養豚場は出荷を見合わせるべきだった」と指摘。豚の異変を発見した場合、豚コレラを最初に疑うことは「常識的対応」で、四日の時点で出荷自粛を求めなかった県の対応も「後手に回ったと言わざるを得ない」と批判する。

 一方、県が四日に確認した豚の症状は流産や食欲不振だったことから、愛知県田原市の伊藤貢獣医師は「ただちに豚コレラを想定することは難しい状況だった。常識的には別のウイルス性感染症を疑う」と話す。症状の現れ方に差が大きいことが豚コレラを判断する最大の難点で「だからこそ早期の精密検査が重要」と強調する。

 愛知県畜産協会の神谷俊樹常務理事によると、豚は非常に風邪をひきやすく、体調不良になりやすい動物だという。「豚コレラは致死率が高く、普通は死ぬ豚が出始めて感染を疑う。把握したからといって即、豚コレラを疑えというのは酷な話。ただ、今後は風邪の症状だけでも豚コレラの感染を疑う必要がある」と危機感を募らせる。

     ◇

 感染の広がった各府県で殺処分が進み、滋賀県と長野県は七日、両県の養豚場で飼育されていた豚それぞれ計六百九十九頭と計二千四百八十二頭の殺処分を終えたと発表した。

◆現場から接種望む声

 養豚農家からは、かつて国内でまん延していた豚コレラを抑え込んだワクチンの接種を望む声が上がっている。

 「ここまで広がると、ワクチンを使わないと止まらないと思う」。岐阜県で養豚場を経営する男性は心境を明かす。

 ただ、国はワクチン接種に現時点では否定的だ。農林水産省によると、岐阜県で昨年九月に最初の感染が発覚するまで、日本は豚コレラ発生のない「清浄国」と国際的に認められていた。清浄国は現在、日本が外れて二十九カ国のみ。豚肉の輸出入は通常、清浄国同士で行われるが、ワクチンを使うと、再び清浄国に認められるまでの手続きが長引き、取引への影響が長期化する可能性がある。

 ある畜産関係者は「清浄国ではない他のアジアの国などから安い豚肉が国内で出回るきっかけになり、価格破壊が起きる恐れがある」と危惧する。

 農水省の小里泰弘副大臣は六日、「これまでワクチンに頼らず、全国の農家が衛生基準を順守することで清浄国の地位を守ってきた。その努力が無に帰してしまう」と現時点では接種に否定的な見解を示した。

 

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