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【社会】

被災陶片 再生の美 英国の建築家集団が制作 資生堂ギャラリー100年記念

震災などで割れた益子焼の破片を土に混ぜて制作した陶器=栃木県益子町で

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 東日本大震災で割れた陶器を土に混ぜ、新たな美術品を制作する試みが、英国の建築家グループにより、資生堂ギャラリー(東京・銀座)を拠点に行われている。資源の再生で生まれた作品は、持続可能な美しさを表すとの考えから、ギャラリー開設百周年を記念して企画。栃木県益子町の登り窯で焼いた作品がギャラリーで展示されている。 (蒲敏哉)

 制作しているのは、古い建物のリノベーションで街づくりを芸術活動としている英国の建築家集団アッセンブルとグランビー・ワークショップのメンバーら五人。

 一月上旬にギャラリーの招きで来日し、資生堂パーラーが入るビル地下にあるギャラリーに工房を設けて制作に臨んだ。

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 震災当時、益子町には約二百三十カ所で益子焼が焼かれていたが、震度5強の地震で、作品や伝統的な登り窯の多くが倒壊。約七億七千万円の被害が出た。

 今回の作品は、震災などで割れた益子焼の陶片の粉と、益子町の土を混ぜて陶土をつくり、石こうの型に液状化した陶土を流し込む成形法で制作。同町の陶芸家鈴木稔(みのる)さん(56)が復興した登り窯で一週間がかりで焼き、約三百点を仕上げた。器の内外に割れた陶器片が浮き上がり、独特の風合いを生んでいる。

 資生堂と益子焼には意外なゆかりもある。

 一九一九年にギャラリーを開設した同社初代社長の福原信三は一九二〇年代、英国人陶芸家バーナード・リーチと交流があり、陶芸品の帯留めを顧客記念品にするなど陶芸へ造詣も深かった。リーチと共に生活用品に美しさを見いだす「民芸」活動を行った人間国宝の陶芸家浜田庄司が作陶の拠点としたのが益子町だ。

 日常の中にある美を追求した福原の美学に共感したアッセンブルのメンバーらが、益子焼を研究し、被災陶器を使った「再生アート」を生み出した。メンバーのルイス・ジョーンズさん(31)は「エコロジーなどの概念を超え、日英文化の融合で再生の美しさを表現する非常に未来的な試み」と強調する。アダム・ウィリスさん(32)は「英国にも成果を持ち帰り、新時代を目指す生活スタイルとして発信できれば」と期待していた。

 資生堂ギャラリーは、開設から四年後の一九二三年に関東大震災で社屋とともに倒壊。福原はその後、事業と文化の再生を目指し銀座の復興に尽力した。

 ギャラリー学芸員の伊藤賢一朗さん(48)は「福原は、化粧品を通じ美しい社会の創造を目指していた。再生された日常品に新たな美を見いだすという考えは、震災を経て激変した社会への提案として、百年を経た今、重なるものがある」と説明している。

 作品は三月十七日まで展示している。

先月、一般の人も参加したワークショップで作り方を説明するルイス・ジョーンズさん(左から2人目)ら=東京・銀座の資生堂ギャラリーで

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