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【社会】

<象徴天皇と平成>(4) 「終活」一歩先を進む

葉山御用邸近くの海岸を散策される天皇、皇后両陛下=1月21日、神奈川県葉山町で

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 二〇一三年十一月、宮内庁は天皇、皇后両陛下の葬送や陵(りょう)のあり方に関する基本方針を発表した。昭和天皇、香淳皇后が眠る武蔵陵墓地(東京都八王子市)に造営する両陛下の陵は規模を縮小し、長い時間を共に過ごした二人が寄り添うように配置するとした。また、皇室で江戸時代初期から続く土葬を、今後は火葬がふさわしいと結論づけた。

 墓をなるべく小さくし、葬送は簡素に。これは、いわば両陛下の「終活」ではと、驚きをもって受け止めた人も。宮内庁関係者は「両陛下がああした形でお考えを示されたのは前代未聞で、慎重に検討を重ねた」と振り返る。

 高齢化社会の進展で、一八年の死亡者数は百三十六万九千人と、平成が始まった一九八九年より五十八万人も増えた。多死社会を迎え、人生の終焉(しゅうえん)を迎える前に自らが葬儀などのあり方を決める終活という言葉は社会に定着した。一二年には「新語・流行語大賞」のトップ10に選ばれ、書店には関連書籍が並ぶ。

 編集者の前田義寛(よしひろ)さん(83)は昨年十一月、転居という形で終活を実行。五十年近く暮らした横浜市内の高台の一戸建てから、駅に近いマンションに移った。足腰が悪い妻のことを思った決断だった。

天皇と平成について話す前田義寛氏

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 持っていた書籍約五千冊の大半は図書館に寄贈した。「寂しいが、その空間にふさわしい生き方もある」という。前田さんが結婚したのは両陛下と同じ一九五九年。同世代の人間として親しみを覚えてきた。「今までも自分の生き方は自分で決めるという考えを貫いてきたと思うが、お墓のこともというのは、身の処し方が見事」と感嘆する。

 葬送簡素化は、陵の規模を抑えて森林環境に配慮し、財政支出をできるだけ少なくしたいという両陛下の意向を踏まえている。

 若い世代からも、共感の声が上がる。納棺士を育成する「おくりびとアカデミー」(東京)代表取締役の木村光希さん(30)は、国土が狭く核家族化も進む日本で、墓を小さくして葬送を簡素化するのは自然な流れと感じている。「今までにないことで、こんな言い方が良いかは分からないけれど、かっこいい」と話す。皇室が「模範解答」を示したように思った。

 終活の一環として、自らが歩んだ道を記録する「自分史」の編さんを手助けする自分史活用推進協議会代表理事の河野初江さん(67)は「同窓会の最近の話題は自分や実家の墓から始まる」と話す。

 だから、両陛下が自分たちの墓や葬送の考え方を示したことに「終活は、その過程にある医療にしても介護にしても選択の連続で、意思が必要になる。結婚や育児もそうだったように、両陛下は常に一歩先を進んでいて、応援していただいているように思う」と話した。

 (この連載は、小松田健一、荘加卓嗣が担当しました) =おわり

 

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