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【社会】

今日又(また)、愛(リーベ)を新(あらた)にした 恋する芥川 熱情と不安を吐露

恋心と不安を吐露した芥川龍之介の書簡=東京都北区の田端文士村記念館所蔵

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◆田端 26日から書簡初公開

 今日また、愛を新たにした−。作家の芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)(一八九二〜一九二七年)が妻となる塚本文(ふみ)への恋心と不安を吐露した親友宛て書簡が、東京都北区の田端文士村記念館で二十六日から初公開される。芥川の恋の熱と繊細さが伝わる貴重な資料だ。

 公開されるのは、芥川の親友で文の叔父にあたる山本喜誉司(きよし)宛ての二通。一九一六年一月二十三日の書簡では、縁談が芥川家で浮上し、当初は取り合わないでいたが、今は文に「可成(かなり)の興味と愛とを持つ事が出来る」とつづる。一方うまく運ぶか自信が持てず、文が他人と結ばれることや、自分の行く末を案じ「僕はさびしい」と結んでいる。

 同年五月十三日の書簡は一転し「今日又 文ちやんに対するLibeを新にした」と直接的に表現。Libeはドイツ語で愛を意味するLiebeを誤記したという。文の思いが「少しでも僕にわかつてゐたら」と不安に揺れ、まずは“外堀”から埋めようと山本に「僕は一切を君にまかせる さうして待つてゐる」と口添えを求めている。

 山本は文の母の末弟。同居し、年齢が近いこともあり文は「兄さん」と慕っていた。山本と旧制中学の同級生だった芥川は山本家を頻繁に訪ね、文とも顔なじみだった。

 山本から書簡を譲り受けた関係者が昨年九月、同記念館に寄贈した。種井丈研究員は「作品や写真のクールなイメージと違い、熱い思いで愛を語っている一方、龍之介の繊細で心配性な一面もうかがえる」と指摘した。

 芥川の書簡が公開される企画展「恋からはじまる物語」は、二十六日から五月六日まで開催される。

<芥川龍之介> 東京生まれ。東京帝大在学中に同人誌「新思潮」に発表した小説「鼻」が、夏目漱石(なつめ・そうせき)に認められ注目を集めた。主な作品に「羅生門」「地獄変」「或阿呆(あるあほう)の一生」など。1918年に結婚。27年に自殺した。長く暮らした東京・田端には室生犀星(むろう・さいせい)ら文学者が数多く住み、文士村として活況を呈した。

 

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