東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<アウティングなき社会へ>(下)善かれと思っても「暴露」 「打ち明けられたら対話を」

亡くなった男子学生がよく着ていた服を手にする母親=愛知県内で

写真

 「自分の居場所や生活が脅かされる不安でいっぱいだったのだろう」。神谷悠一さん(33)は、同性愛者だと暴露される「アウティング」の被害を受け、校舎から転落死した一橋大法科大学院の男子学生=当時(25)=の心境を、そう思いやった。自身もアウティングされた一人だ。職場で、知人が幹部に、神谷さんがゲイ(男性同性愛者)であることを伝え「当事者だから守ってあげてほしい」と話してしまった。

 「足元が抜けるようだった」。善かれと思っての行動らしかったが、秘密を突然暴かれた神谷さんにとっては、恐怖でしかなかった。同性愛に対して、誰がどんな嫌悪や差別感を持っているか分からない世の中なのに。攻撃されるのではないか。排除されるのではないか−。職場で人とすれ違うたびに、びくびくした。

 レズビアン(女性同性愛者)の大路(おおじ)香里さん(33)も数年前、告白した女性にばらされ、共通の知人間で広まってしまった。「関係性を変えてしまう繊細なプライバシーだから、信頼し、心を許した相手にしか言わなかったのに。ショックでした」

 性的少数者の相談を受けてきたNPO法人「共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク」代表理事の原ミナ汰(た)さん(62)は、「この人ならと信頼して打ち明けた人にばらされるので、アウティング被害は、ショックが大きい」と語る。相手が親しい関係のために被害を言い出しにくく、周囲には当事者間の問題として距離を置かれやすい面が「性暴力に構造が似ている」と話す。

 恋愛話は男女間のことというのがまだまだ前提で、つい最近までLGBTなど性的少数者は笑いの定番のネタにもされていた。そんな空気の中では、意図的に傷つけようとするアウティングだけでなく、想定外だった同性愛をカミングアウトされて(打ち明けられて)戸惑い、誰かに話してしまうことも起こりがちだという。

 「打ち明けられたら、まず、信頼して話してくれたことに感謝を示してほしい。恋愛感情を告白されたら、遠慮せずに自分の好みや恋の対象になるかどうかをはっきり伝えていい」。一人で抱えきれない場合は、守秘義務のある専門窓口に相談することもできる。

 「男女間の異性愛も、同性愛も、基本は人と人との関係です。対話して、その中で自分の知られたくないことを他人に言われたらどうか、と考えてみることが大切だと思う」

 亡くなった一橋大の男子学生の両親は生前、息子から直接、ゲイだと聞くことはできなかった。アウティングという形ではなく、もし今、生きていてゲイだと話してもらえたら−。母親はちゃんと受け止め、声を掛けてあげたかった。「いいパートナーができたら、連れていらっしゃいね」と。 (奥野斐)

写真

この企画は上・中・下の3回連載です。全文はこちらで読めます。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報