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【社会】

ベビーカー通勤 分かってほしい 罵声や舌打ち「びくびく乗車」変えたい

子連れ通勤の大変さを訴える平本沙織さん(中央奥)と夫の知樹さん(右)、長男の律樹君=東京都品川区で

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 自宅近くの保育所に赤ちゃんを預けられない場合、働く女性らはラッシュ時の電車に乗り、遠くの保育所までベビーカーを押して移動する。ところが「満員電車にベビーカーは迷惑」と非難されることが少なくない。びくびくしながら電車に乗らなければならない社会の雰囲気を変えたい。そんな思いで、母親たちが声を上げている。 (石原真樹)

 「忘れもしない小田急線で。千代田線で」。東京都内で夫の知樹(ともき)さん(31)とデザイン会社を営む平本沙織さん(33)は昨年末、ツイッターにこう書き込んだ。

 ラッシュ時に子連れで電車に乗ることが話題になっていたのを見て、二年前の光景がよみがえった。満員電車にベビーカーで乗ったら、スーツ姿の五十代くらいの男性に「この時間にベビーカーで乗るな」と罵声を浴びせられた。

 「思わず『抱っこひもだったら子ども死んでるわ!ベビーカーもゆがむのに。一番大きいので来て正解』って言ってしまった」と書き込むと、一月末までに二万六千件超の反響があった。「私も怒鳴られた」「お母さん頑張れ」。共感や励ましが相次いだ。

 平本さんは二〇一六年六月に長男律樹(りつき)君(2つ)を出産し、三カ月後に職場復帰。当初は午前八時ごろ、東京メトロ千代田線で一時保育の施設まで二駅分をベビーカー通勤していた。一七年四月に第五希望の認可保育所へ預けることができ、小田急線で四駅通った。

 知樹さんとは出勤時間が違い、体重一〇キロの子どもにパソコン、子どもの着替えまで抱えられず、ベビーカーで通わざるを得なかった。でも、電車内で冷たい言葉をぶつけられたり、舌打ちされたり。エレベーターで乗客に「下りろ」と言われたこともあった。知樹さんと一緒だと、そんな目に遭うことはなかった。

 「人を信じられなくなりそうだった」と落ち込んだのは、平本さんだけではない。

 中野区の団体職員野本美希さん(42)も「泣かせてはいけないとびくびくしていた。すみませんと周りに謝ってばかりで本当に疲れた」。同区のパート職員の女性(37)は車内で娘が泣いたとき、男性から「うるせえばか野郎」と言われた。「泣かせないためにお菓子を与えると、白い目で見られたり」とため息をつく。

 平本さんは、投稿に「どれだけ自分たちの要求を押しつければ気が済むのか」との批判も寄せられ、母親と子どもに向けられる厳しい目線を感じたという。それでも「泣き寝入りしたくない」と、子どもの安全な移動について問うアンケートをネットで始めた。「私は夫が送迎を代わってくれたけれど、それができないお母さんもいるから」。目指すのは、子どもに優しい社会だ。

 アンケートは今月二十三日まで。サイトはhttp://fb.me/Safer.public

◆大江戸線に子育て応援スペース

都営大江戸線でベビーカーを置けるスペース。新車両には「子育て応援スペース」を設ける

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 首都圏で電車内のベビーカー利用が認められたのは1998年。「乗客に迷惑」などの理由で折り畳むのがルールだったが、鉄道各社が母親らの要請を受け入れて実現した。国土交通省は2014年、ベビーカーを折り畳まずに使える優先スペースのマークを決定。車いすとの兼用スペースの導入が進むが、肩身の狭い思いをする女性は多い。

 「ワンオペ育児」の著書がある明治大の藤田結子専任教授はその理由として、少子化で子どもの声に慣れておらず不快に感じる人が増えていることや、「女は家庭で子育て」という古い価値観があると指摘。「欧州などのように公共空間に子どもがいるのが当たり前にして、『子どもは社会で育てる』という認識が進むことが必要」と話す。

 東京都は19年度、都営大江戸線の一部車両で、ベビーカーを置けるスペースにイラストをあしらい「子育て応援スペース」を設ける方針だ。担当者は「子ども部屋のように装飾して、乗客に『子育て中の人を温かく見守って』とアピールしたい」と話している。

 

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