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【社会】

「わいせつ被害は幻覚」 「術後に麻酔影響」医師に無罪判決

 麻酔が残る女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつの罪に問われた男性医師(43)の判決で、東京地裁は二十日、「女性は麻酔の影響で幻覚を体験した可能性がある」などとして無罪(求刑懲役三年)を言い渡した。

 男性は一貫して無罪を主張しており、わいせつ行為の有無が争点だった。

 大川隆男裁判長は判決理由で、乳房の手術後に胸をなめられたとする女性の証言は、具体的で迫真性があると指摘。一方で、通常より多量の麻酔薬が使われており、術後に幻覚を見る「術後せん妄」に陥りやすい状態にあったとして、証言の信用性に疑問を呈した。

 検察側は「女性の胸に付いた男性のDNA型は多量で、わいせつ行為があった証し」としていたが、大川裁判長は「多量だったとは言い切れず、会話による唾液のしぶきや触診での汗が付いた可能性がある」と判断。わいせつ行為があったとするには「合理的な疑いが残る」と結論づけた。

 男性は二〇一六年五月、乳腺外科医として非常勤で勤めていた東京都足立区の病院の病室で、女性の胸をなめたとして起訴された。

◆「性被害、どう立証すれば」

 判決の読み上げが終わると、緊張した面持ちだった男性医師は安堵(あんど)の表情を浮かべ、弁護団と握手した。

 判決後、東京都内で記者会見した男性は「ほっとしている」と述べ、「深く内容を掘り下げた納得のできる判決内容だった」と喜んだ。主任弁護人の高野隆弁護士も「幻覚についても、われわれの主張がほぼ認められた完全な無罪判決」と評価した。

 さらに、高野弁護士は「患者の女性には『被害は現実で間違いない』との確信がある。日本の医療現場では、術後の幻覚について十分に説明されていてない」と注文を付けた。男性も「医療に携わっていれば起こり得る話。診察は必ず複数の医療者で対応する必要がある」と述べた。

 一方、別途会見した女性は「どうしたら信じてもらえるのか。DNA型も検出されているのに、性犯罪被害者はどう被害を立証すればいいのか」と訴え、検察官に控訴を求めたことを明かした。

 東京地検の久木元伸・次席検事は「判決内容を十分検討して適切に対処したい」とコメントした。

 (蜘手美鶴)

 

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