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【社会】

重度障害、私も1人暮らし ドキュメント映画 23日公開

映画「道草」の一場面で、介護者とブランコで遊ぶ岡部さん(左)。介護者によると、1人暮らしを始めて我慢を覚え、ぐっと成長したという=宍戸監督提供

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 重度の知的障害がある青年が一人暮らしをする日々を追ったドキュメンタリー映画「道草」が二十三日から、東京都内で公開される。相模原市で起きた知的障害者施設殺傷事件の被害者も登場する。障害者が地域で暮らす動きが広がる一方、重度障害者の多くはいまだ施設や病院で過ごすのが実情。宍戸大裕(だいすけ)監督は「彼らのありのままの生活を見て、もう一つの選択肢があることを知ってほしい」と願いを込める。 (浅野有紀)

 「ものすごく時間がかかります!」。コンビニの店員に宣言して小銭を一枚ずつ財布から取り出そうとする青年。「ダーッ」とうれしそうに声を上げて散歩し、タンポポの綿毛をフーッと飛ばす。「道草」は、自閉症や重度の知的障害がある三人の日常にカメラを向けた。

 製作のきっかけは、登場人物の一人、岡部亮佑(りょうすけ)さん(26)の父親から「息子を撮影してくれないか」と頼まれたこと。前作「百葉(ひゃくよう)の栞(しおり) さやま園の日日」で知的障害者の入所施設の生活を撮影した宍戸監督。家庭で居場所をなくし、施設からは出たいと願う女性入所者を見つめ「彼女はどこへ行けばいいのか」と疑問を感じていたところ、一人暮らしをする岡部さんを知り一筋の光が差した気がした。

 「道草」に登場する青年たちは、親元を離れ、通所施設で過ごす以外は介護者が交代で付き添って生活している。自傷行為が激しくて施設を出ざるを得なかった人や、施設職員から暴力を受けたことで、他人に手を上げるようになってしまった人もいる。今でも自分の気持ちが思うように伝えられないと、店のガラスを割ってしまうなどハプニングは絶えない。

 映画では、付き添う介護者が「人間らしい生活を送れるよう支えたい」と願う一方、「外出先で人に危害を加えないように」という職務意識のはざまで葛藤しながら、青年の心と向き合う様子も描かれている。

 二〇一六年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者が殺傷された事件で、重傷を負った一人、尾野一矢(かずや)さん(45)と両親も登場。両親は事件を機に「障害があっても、できることはある」と一矢さんの可能性を見つめ直し、一人暮らしができないか模索中だという。

 宍戸監督は「家族が知的障害の子どもとの生活に疲れ果て、おりに閉じ込めていたという事例は今でもある。どうしたら、その人は外に出られたのだろうかと考えながらカメラを回した」と話す。

 二十三日から新宿区の「K’s cinema」を皮切りに順次、全国で公開される。

 

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