東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

原子力機構の全国8拠点 火災通報100件近く 11〜18年度

 日本原子力研究開発機構が、全国に保有する八つの原子力研究拠点を対象に火災や消防への通報件数を調査したところ、二〇一一年度から約八年間で百件近くに上ることが二十三日、分かった。機構関係者は「十分な対策が講じられない理由に費用面もある」と話しており、施設の老朽化が進み予算も限られる中、適切な防火対策が取られていない現状が浮き彫りとなった。

 機構は、廃炉作業中の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)のほか、研究用原子炉がある原子力科学研究所(茨城県)や核燃料製造に必要なウラン濃縮技術を開発した人形峠環境技術センター(岡山県)など八つの研究拠点にある計八十九施設を対象に、火災の発生件数を調査した。

 一一〜一八年度、設備に電気を送る分電盤などの火災十三件と、火災検知器の作動や通報により消防が駆け付け火災とは判断されなかったものの発煙や焦げ跡が確認されたケース八十三件の計九十六件に上った。多くが放射線管理区域外での発生だったこともあり、大きな事故にはつながっていない。

 機構の施設では、一四年度に原子力科学研究所の屋外に設置してあったディーゼル発電機からの発火や、加速器実験施設「J−PARC」(茨城県)で制御盤が燃えるなどの火災事案が続いた。緊急で安全点検を実施したが、その後も抜本的な解決には至らず、設備の電気系統で出火が相次いだことを受け、原子力規制委員会が件数を報告するように求めていた。

 もんじゅや新型転換炉ふげんの廃炉作業が進む中、各地にある機構の主な施設全てを廃止すると約一兆九千億円の費用がかかるとの試算がある。廃止完了に約七十年と長期間を要し、費用は国民負担となる。十分な予算を確保しづらいといった背景を踏まえ、規制委関係者は「廃止に向かう施設で新しい設備に交換しにくい。トラブルをなくすのは困難な状況だ」と語った。

写真

◆規制委「氷山の一角」

 日本原子力研究開発機構は、各地の原子力施設で管理体制の不備などから、火災や核燃料物質の漏えいといったトラブルを繰り返してきた。その度に「再発防止」を掲げ機器の緊急点検を実施したが、成果は見えず、火災や事故は続いている。原子力規制委員会からは「トラブルは機構が抱える問題の氷山の一角だ」と厳しい意見も出ている。

 一九九五年に高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の二次系の冷却材ナトリウムが漏れ、火災が発生。九七年には東海再処理施設(茨城県)で爆発事故が起きるなど保守管理の体制が問われてきた。

 二〇一四年までに茨城県の研究拠点の施設で火災が相次いだことを受け、機構は原因分析と再発防止のために緊急で設備や機器の点検をした。一二年の電灯盤の発煙を含め、多くの原因を「老朽化」「管理体制の不備」と結論付けた。

 しかし、今年に入ってからも核燃料サイクル工学研究所(茨城県)で、核燃料物質が漏れるトラブルが起きた。機構は一五年の緊急点検後の報告書で「社会の信頼を得られるための取り組みを続ける」とまとめたが、実現性は不透明だ。

<日本原子力研究開発機構> 高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の運営や放射性廃棄物処分、東京電力福島第一原発の廃炉技術の研究などを行う。2005年、当時の日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構を統合して発足した。茨城県東海村に本部を置き、同県や青森県、福井県、岐阜県、岡山県にある八つの研究拠点のほか、北海道や福島県にも施設を保有している。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報