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【社会】

「パソコンの時代は終わった」 東洋大INIAD・坂村健学部長に聞く

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 この三十年でインターネットが人と人をつないだ。あらゆるモノがネットでつながる「IoT」もどんどん生活に入り込んできた。どこにでもコンピューターがある社会を、早くから予想していたINIAD(イニアド)(東洋大情報連携学部)の坂村健学部長(67)は激動の時代をどうみていたのか。(三輪喜人)

 −平成で一番の変化は。

 コンピューターの世界ではインターネットでしょう。家電や自動車、プリンターなど、あらゆるものにコンピューターが入った。それがネットワークでつながるだけじゃなく、ネットの中で、人間生活や社会活動が行われるようになった。コンピューターやインターネットなしに社会が動かなくなったのが平成という時代なんですね。

 −始まりは。

 平成元年(一九八九年)一月に、世界初のインターネットの商用利用が始まった。私の研究でいえば、八四年から開発してきた国産の基本ソフト「TRON」(トロン)の成果が出始めたころです。

 トロンは電子機器に組み込まれる小さなコンピューターを動かす基本ソフトです。自動車やデジカメ、IoT機器、探査機「はやぶさ2」などにも使われています。シェア60%で、昨年はIEEE(米国電気電子学会)の世界標準規格になった。インターネットもトロンも、平成をかけて完成したといえます。

 −コンピューターの性能も飛躍しました。

 平成の初めと比べ、コンピューターの性能は千倍以上、ネットの通信速度は一万倍になりました。消費電力と価格も劇的に低くなった。八〇年代の先端スパコンより、腕に着けるアップルウオッチの方が性能がいい。半導体の驚異的な進歩で激変したのです。

 大型コンピューターにパソコンがとって代わった。だが、今やスマホに代わられ、パソコンが主役の時代は終わった。平成に誕生して終わったものの代表がパソコンだろうと思います。

 −平成の初頭、日本の電機メーカーは世界最強でした。

 八九年の世界の半導体メーカーのトップ十社には、NECや東芝など日本企業が六社も。ところが近年は、韓国サムスン電子や米国インテルが上位で日本企業は見る影もない。統合するなど企業数も減りました。

 −なぜでしょう。

 インターネットに乗れなかったのが大きな原因では。それまでは自社製品で囲い込むクローズな戦略で成功してきたが、全部裏目に出た。インターネットの根本思想はオープンで誰もがつながれること。トロンが成功したのもオープンかつ無料で公開したからです。

 −将来の姿は。

 平成の最後に、人工知能(AI)が台頭してきました。二〇一六年にアルファ碁がトップ棋士に勝った。グーグル翻訳が進化したのも同じ年だ。AIスピーカーが現れ、言葉で命じればテレビや電気をつけられるなど、IoTのある生活の可能性を感じさせるようになった。あらゆるものがネットにつながる流れは、もう止まらないと思う。

 一番すごいのは、かつては一部の人しかコンピューターの利益を享受できなかったが、今では誰でも受けられるようになったこと。ネットの検索は代表例でしょう。情報やコンピューターがすべての学問の基礎となる時代。多くの人が少し情報の力を勉強することで、平成の次の時代に大きなイノベーションを起こせるのではないでしょうか。

 <さかむら・けん>1951年、東京生まれ。79年、慶応義塾大博士課程修了、東京大助手などを経て東大教授。現在、INIAD(東洋大情報連携学部)学部長。コンピューターの基本ソフトTRONの開発に取り組んできた。

 あらゆるところにコンピューターがあり、ネットワークにつながる「ユビキタス社会」を提唱し、IoT時代を予言していた。日本学士院賞や国際電気通信連合(ITU)150Awardsなど受賞多数。

 

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