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【社会】

養護施設長 刺され死亡 容疑の元入所者逮捕「施設に恨み」

 二十五日午後一時五十分ごろ、東京都渋谷区幡ケ谷三の児童養護施設「若草寮」で「男が暴れている」と施設関係者の女性から一一〇番があった。警視庁代々木署によると、施設長の大森信也さん(46)=中野区中野一=が一階の施設長室で右胸や腹などを刺され、病院に運ばれたが死亡した。署は殺人未遂の疑いで、室内にいた住所職業不詳、田原仁(ひとし)容疑者(22)を現行犯逮捕した。

 署によると、田原容疑者は二〇一二年三月〜一五年三月、若草寮に入所していた。「施設に恨みがあった。施設関係者なら誰でもいいと思い、殺すつもりで刺した」と供述。大森さんと面識があったとも話している。署は今後、殺人容疑に切り替え、詳しい動機などを調べる。

 寮内には当時、大森さんのほかに職員三人がいた。署は田原容疑者が一人で侵入し、子どもらが暮らす二、三階には行かず、一階入り口近くの施設長室にすぐに向かい、持ち込んだ文化包丁で刺したとみている。

 逮捕容疑では二十五日午後一時四十五分ごろ、寮内で、大森さんの腹部などを刃物で複数回刺し、殺そうとしたとされる。

 現場は京王新線幡ケ谷駅の北約三百メートルの住宅街。署などによると、若草寮ではさまざまな事情で親と暮らせない小学一年〜十八歳の二十九人が生活。三十人以上の職員が児童相談所などと連携し、子どもらの生活や自立を支援している。一九七四年四月、主に高校生向けに開設。それまでは婦人保護施設などとして使われていた。

◆死亡の施設長 OB「父親に近い存在」

 死亡した施設長大森信也さんは「子どもたちの自立支援に全てを懸けるような人」と評されていた。かつて入所していた男性も「父親に近いように感じていた」。施設の内外から厚い信頼を寄せられていた。

 「聞き上手で何でも相談できた。自転車旅行を一緒にしたのはとてもいい思い出です」。十代の頃に若草寮で暮らした川崎市の男性(30)は、父親のような存在だったと振り返る。施設を出た後も年に一度は連絡を取り、一月には一緒に食事をした。家族の悩みなどをじっくり聞いてくれたといい、「もっと話したいことがあったのに。信じられない」と沈んだ声で話した。

 児童養護の専門家の中でも熱心と評判だった。「とても真面目で正義感があり、現場にこだわって子どもと接していた。トラブルは聞いたことがない」。十数年来の知人で児童養護施設「二葉学園」(東京都調布市)の統括施設長武藤素明(そめい)さん(66)は驚きを隠せない。

 大森さんは長年専門誌の編集委員を務め、二〇一五年には児童養護施設を巣立った子どもの葛藤をまとめた共著「子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援」を刊行した。出版元の深沢孝之編集長によると「子どもたちは施設を選べない。自分の所も含め、全ての施設が児童のケアの水準を上げる必要がある」と頻繁に口にしていたという。

 

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