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【社会】

外国人実習生、相談できず中絶 妊娠理由に解雇 後絶たず

「望まない妊娠をしないよう、避妊を徹底して」と呼び掛ける山村さん(左)とマリアさん=埼玉県川口市のカトリック川口教会で

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 外国人技能実習生として来日した若い女性が思いがけず妊娠し、誰にも相談できずに中絶するケースが相次いでいる。埼玉県川口市のカトリック川口教会のベトナム人シスター、マリア・レ・ティ・ランさん(55)は、女性たちの深刻な相談が増えていることから、医師による性教育に乗り出した。 (浅野有紀)

 「仕事をしながら育てるのはとても難しいです」。同教会で医療相談に応じている横浜市の内科医山村淳平さん(64)が、ベトナム人技能実習生らに語り掛けた。

 「女の体の問題」と題して一月二十日に教会で初めて開いた性教育講座。妊娠しても産み育てる経済力がなく、薬を飲むなどして隠れて中絶する人が多いことや、企業から帰国を迫られたケースなど、妊娠を巡る厳しい実態を紹介。望まない妊娠をしないため、避妊を呼び掛けた。

 法務省によると、全国の外国人技能実習生は二〇一八年六月現在、約二十八万人で、うち女性は約十二万人と半数近い。ベトナム人は二年前から急増。男女合わせて計約十三万人で、国別で最も多い。マリアさんの元に妊娠の相談が増えたのも、ここ二、三年という。

 昨年十二月にも悲しい報告があった。ある実習生が腹痛を訴え、勤務先に知られないよう社員寮から少し離れた飲食店に救急車を呼んだ。しかし、病院に到着する前に流産。彼女はインターネットで手に入れた中絶の薬を飲んでいた。妊娠を誰にも知らせていなかったという。

 マリアさんは「妊娠したと伝えてくれれば、ベトナムで安心して出産できるシェルターを整えたのに」とため息をつく。「ベトナムの田舎では、性教育を受ける機会がありません。結婚前の妊娠は恥ずかしい上、来日のための借金もある。追いつめられ、誰にも言えず中絶してしまうんです」

 東京都港区にある寺院「日新窟(にっしんくつ)」では、ベトナム人の尼僧ティック・タム・チーさん(41)が、日本で亡くなった実習生らを弔っている。祭壇に並ぶ位牌(いはい)の中で背の低いものは、中絶や死産の赤ちゃんだ。一二〜一八年に弔った約八十人のうち二十人超が赤ちゃんだった。

 寺には、中絶したことを思い悩んだ女性が訪れる。チーさんは「慣れない日本で孤独感から男女交際に至る。自分のつくった命をなくした恐ろしさで、涙をボロボロ流して相談にくる」と打ち明ける。

◆「解雇は無効」政府見解

 法的には、外国人技能実習生にも日本人労働者と同じ権利が認められている。妊娠を理由に帰国させることは違法との判例も出ており、政府も「妊娠を理由にした解雇は無効」という見解を示している。受け入れ企業は、妊娠した女性実習生から求めがあれば深夜労働から外すなど、母体を守る措置も講じなければならない。

 しかし、マリアさんによると、妊娠を理由に実習生を強制帰国させる企業は後を絶たないという。

 一月には、出産直後の男児を他人の住宅敷地内に置き去りにしたとして中国人実習生が保護責任者遺棄容疑で神奈川県警に逮捕された。

 県警によると、この実習生は「会社に知られたら日本にいられなくなる。日本人の家に置けば育ててもらえると思った」と話したという。

 入管難民法の改正で今後、外国人労働者はさらに増える見込みだが、想定外の妊娠という深刻な悩みを抱えた女性を支える体制は不透明だ。

 山村さんは「望まぬ妊娠をしないための教育は必要。ただ、妊娠は人として当然のこと。外国人労働者の出産の受け入れ態勢を早急に整えるべきだ」と訴えている。

 

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