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【社会】

新出生前診断拡大 カウンセリング、重要に 根本的議論求める声も

 妊婦の血液で胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」の施設要件が緩和され、実施施設が増える見通しとなった。検査では、妊婦や家族の判断を支援する遺伝カウンセリングの役割が重要になるが、結果に動揺する人が増えるとの懸念も。検査対象の疾患は将来的に拡大する可能性もあり、専門家は「是非について根本的な議論が必要だ」と問題提起する。

 「無認定施設で多くの妊婦さんが検査を受け、カウンセリングも確定検査もなく困っている。ワースト(最悪)の状況を少しでも良くしたい」。日本産科婦人科学会の藤井知行理事長は二日の記者会見で、要件緩和の理由をこう語った。

 染色体異常が判明した胎児の大半が中絶される検査の拡大と、十分な支援体制がない医療施設で現に検査を受ける多くの妊婦の存在。極めて重い二つの事実の間で絞り出した苦渋の判断だった。

 検査を希望する妊婦に医療機関はどう対応しているのか。

 「ただ情報を伝えるのではなく、対話しながら、検査を受けるのか、(異常が確定しても)妊娠を続けるのか、結論を見つけていく」。名古屋市立大臨床遺伝医療部の鈴森伸宏病院教授は遺伝カウンセリングの要点をこう説明する。

 同大のカウンセリングには産婦人科医と臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーが主に関わり、妊婦のほかパートナーにも同席してもらう。染色体異常や検査の仕組み、精度を説明し、受けない選択肢もあること、ダウン症でも元気に成長すること、社会に支援の仕組みがあることを伝える。

 一回三十〜六十分、検査の前後で三回以上実施する。認定遺伝カウンセラーの武田恵利さんは「検査に何を求めるのか、しっかり聞く」ことを重視する。

 異常があることを示す「陽性」の結果を受け入れるのに時間がかかる人、陰性でも不安に思う人がいる。鈴森さんは「施設が増えると、あまり考えずに受ける人も出てくるだろう。結果に動揺する人が増えるかもしれない。カウンセリングは一層重要となる」と話す。

 出産前に胎児の異常を調べる方法には他に、従来行われてきた母体血清マーカー検査、羊水や絨毛(じゅうもう)を採取する方法がある。総件数は十年間で二・四倍に増え、二〇一六年には少なくとも約七万件行われた。

 今後の課題は何か。お茶の水女子大の三宅秀彦教授(臨床遺伝学)は、検査を受けようとする人への情報提供を重視。「専門資格者の数や検査の件数、他の施設との連携状況などを見られる仕組みを国が作るべきだ」と話す。

 出生前診断は障害のある人を排除し、命の選択につながるとの懸念も根強い中、検査の対象疾患は将来、拡大するとの予想もある。三宅さんは「胎児の遺伝情報をどこまで知るべきか、規制は必要ないか。根本的な議論が必要だ」と提案する。

 その上で三宅さんは、疾患や障害と向き合う社会の在り方にも目を向ける。「ダウン症の子どもや遺伝的な疾患の子どもが生まれるのは普通のことだ。みんな生きている。理解を深めていく教育が大切だ」

 

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