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【社会】

大嘗宮に茅葺き残して 文化団体「日本の原風景 世界に発信」

一般公開された前回の大嘗宮。中央奥は悠紀殿の茅葺き屋根。ほかの建物は板葺き屋根=1990年11月29日、皇居・東御苑で

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 11月に行われる新天皇の大嘗祭(だいじょうさい)のため建設される大嘗宮に伝統の茅葺(かやぶ)き屋根を残すよう、一般社団法人「日本茅葺き文化協会」(茨城県つくば市)が宮内庁に計画変更を求めている。5月には岐阜県の世界遺産・白川郷などで国内初の「国際茅葺き会議」もあり、協会役員は「大嘗祭と茅葺き文化への理解を深め、日本の原風景の魅力を世界に発信したい」としている。 (阿部博行)

 大嘗祭は稲作を中心とした収穫儀礼に根差し、天皇が即位後初めて天照大神(あまてらすおおみかみ)と神々に新穀を供え、国の安寧と五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈る儀式。大嘗宮は大小四十近い建物で構成され、前回は主祭場の悠紀殿(ゆきでん)、主基殿(すきでん)と身を清める潔斎(けっさい)や着替えをする廻立殿(かいりゅうでん)に茅葺き屋根を残し、ほかは板葺(いたぶ)き屋根などに変えた。

 宮内庁は今回、経費節減と工期の確保のため、主要三殿も板葺きとする方針を決めた。茅葺きはススキなどイネ科の植物を使うが、良質の茅の調達が難しく、専門技術者の不足と賃金の上昇に加え、工事中の風雨対策で建物を覆う素屋根(すやね)の設置も必要となる。

 協会は二〇一〇年から茅葺き文化の振興のため活動しており、宮内庁に悠紀殿と主基殿だけでも茅葺きを残すよう再考を要望。代表理事の安藤邦広・筑波大名誉教授(70)=建築学=は「日本は昔から『豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国』と称したように稲作が国土と社会の礎であり、大嘗宮の茅葺き屋根がそれを象徴していた。今回の変更は文化的な損失になる」と指摘する。

屋根の中央部を逆葺きにした奈良県の民家=日本茅葺き文化協会提供

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 安藤さんは経費節減策として、茅の丈夫な根元を下方に向ける一般的な「真葺(まぶ)き」ではなく、穂先を下にする簡易な「逆葺(さかぶ)き」を提案する。逆葺きは平安中期の法典「延喜式(えんぎしき)」にも記された大嘗宮の屋根の葺き方で、茅の使用量と人件費が半分以下で済み、短期利用の建物に適している。

 宮内庁管理部の坪田真明部長は「板葺きにすることで、自然素材を用いて短期間に建設するという大嘗宮の伝統は維持できると考えている」と説明。逆葺きには「耐久性と防水性に不安があり、今回は日程的にも、その是非を検討している時間的な余裕は残されていない」と話している。

 茅葺きは、文化庁が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録をめざす「伝統建築工匠(こうしょう)の技」の一つ。欧州の一部でも環境・資源保護の観点から再評価が進む。国際茅葺き会議は五月十七〜二十三日、岐阜県白川村の合掌造り集落や京都府南丹市美山町の茅葺き集落などを会場にイギリス、オランダ、ドイツなど七カ国の茅葺き職人がフォーラムやワークショップで交流する。

 

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