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【社会】

「国は国民を守らない」 安保法施行3年 違憲訴訟原告の戦争孤児

安保法制違憲訴訟について話す原告の金田茉莉さん(右)=18日、東京・霞が関で

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 二十九日で施行三年となった安全保障関連法は違憲だとする集団訴訟の審理が、全国二十二の地裁で進んでいる。原告総数は七千六百七十五人。東京地裁での訴訟の原告で戦争孤児の金田茉莉(まり)さん(83)=埼玉県蕨市=は、安保法によって他国を武力で守る集団的自衛権の行使に道を開いたことで「日本がアメリカの手先になって、戦争に巻き込まれる可能性が高まっている」と危機感を募らせる。 (西田義洋)

 「国の政策で疎開による孤児がでたのに、国は孤児たちを保護してくれませんでした」。東京地裁で十八日にあった口頭弁論で、金田さんはこう強調した。

 東京大空襲直後の一九四五年三月十日朝、九歳だった金田さんは学童疎開先の宮城県から東京に戻った。列車が着いた上野は一面、焼け野原。浅草の自宅は焼失し、母と姉、妹が死亡。父は幼いころに病死しており、孤児になった。九人の大家族の親戚に預けられ、「朝から晩まで小間使いのように働かされ、『親と一緒に死んでいたら良かったのにね』と言われた」。

 子育てが終わり、戦争孤児の聞き取りを始めると、自分以上の壮絶な体験を知った。金田さんは「上野の地下道は戦争孤児であふれ、大勢の子どもたちが餓死し凍死した。お金も食べ物もなく『浮浪児』になった孤児は捕まってトラックに山積みにされ『収容所』に送られたり、親戚宅を逃げ出して人身売買されたり、農家で奴隷のようにこきつかわれたりした」と説明。「戦争になったら弱者は捨てられる」と感じる。

 二〇一九年度から五年間で購入する兵器を定めた政府の中期防衛力整備計画(中期防)は安保法などで変質した国防の在り方を装備面で追認し、日米の軍事一体化を進めたのが最大の特徴。一九年度予算の防衛費は五兆二千五百七十四億円と、過去最大を更新した。

 「軍事費をどんどん使い憲法も変え、戦争をする国にしようとしている」と金田さん。「『国を守るためには自衛隊が必要だ』なんて言っても、国は国民を守らない。昔も『聖戦だ』とかうまいことを言い、私たちをだました。守ってもくれなかった」と語る。

 金田さんは長年、戦争孤児の証言や資料を集めて実態を伝えてきたことが評価され、一九年度の吉川英治文化賞の受賞が決まった。「悲惨な体験の記憶を封印している戦争孤児は少なくない。それでも話してくれる人が増えているのは、再び戦争孤児をつくってはいけないとの必死の思いから。私たちが遺言として残しておかなくちゃいけない」

<安保法制違憲訴訟> 集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法は違憲だとして、同法に基づく自衛隊出動の差し止めや、憲法が保障する平和的生存権などの侵害に対する国家賠償を求め、東京や大阪、名古屋など全国22地裁で25件の集団訴訟が起こされている。

 

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