東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

避妊・中絶 指導要領超える授業明記 都の性教育 広がる裁量

改訂された東京都教委「性教育の手引」

写真

 東京都教育委員会は二十八日、教員向けの指導書「性教育の手引」の改訂版を公表し、学習指導要領の範囲を超えた授業の実施を、初めて容認した。「中学校では性交を教えない」などとする指導要領の順守を強調した改訂前から方針転換したともいえ、性教育が変わるきっかけになりそうだ。 (石原真樹)

 手引は、小、中、高校と特別支援学校での性教育の考え方をまとめた。学習指導要領を超える授業について、都教委が昨秋から実施してきた産婦人科医による中学校でのモデル授業を例に、コンドームやピルでの避妊や人工妊娠中絶を含む授業の流れ、保護者への通知文案を掲載。授業を受けた生徒の94%が「役に立つと思う」と回答したアンケート結果も載せた。

 性の多様性にも初めて言及し、性同一性障害や性的指向などへの配慮を明記。改訂前の手引に不適切な性教育として掲載した都立七生養護学校(現七生特別支援学校)などの例は削除した。手引は四月から活用される。

 この日の教育委員会の会合では、委員から「現場の先生を縛るのではなく、豊かな性教育の実践のために活用を」と注文が付いた。傍聴した一般社団法人「人間と性」教育研究協議会の水野哲夫代表幹事は「国際基準には程遠いが、積極的に性教育を行ってもバッシングされないとの安心感は広がるのでは」と話した。

 手引は一九九四年度から作られ、今回は二度目の改訂。作業中の昨年三月、足立区立中学校が性交や避妊など学習指導要領にない内容を教えたとして都議が問題視し、性教育のあり方が議論を呼んだ。

「性教育は大切」と話す元都立七生養護学校教諭の日暮かをるさん=東京都庁で

写真

◆「不適切」の記述削除 元教諭「ここから立て直したい」

 都教委「性教育の手引」から、16年前に都立七生養護学校(現七生特別支援学校)で行われていた性教育を「不適切」と非難するくだりが、ようやく消えた。「ここから性教育を立て直したい」。28日、都教委の会議を傍聴した同校の元教諭、日暮(ひぐらし)かをるさん(70)は胸をなで下ろした。

 「男女の性器の名称の入った『からだうた』を歌わせた」「膣(ちつ)付きの子宮内体験袋、男性器から注射器で白い液体を噴射する射精キット等を使用していた」

 「これだけ読むと『何やってるのか』と思いますよね。悔しかった」。同校には知的障害のある小学生から高校生までが通う。「家庭的に恵まれず安心感や自己肯定感のない生徒も多かった。母親を求める気持ちや思春期の性衝動、体の変化への拒否感が混ざり合い問題を起こす子もいた。性についてきちんと教える必要があった」と振り返る。

 「子宮内体験袋」を作ったのは、生まれて良かったと感じてもらうため。クッション入りの大きな袋に子どもが入り、「生まれるよ」と合図すると、ほかの子どもたちが「がんばれー」と応援。狭い管を通り外へ出ると、みんなに「おめでとう!」と祝福される。

 「射精キット」は、夢精をおねしょと勘違いしパニックになる子どもに、大人になるための体の仕組みだと理解させ、安心させる教材だった。

 保護者に感謝され、他校の先生から参考にされたが、2003年、都議会が問題視。都教委は教材を没収、校長を降格処分に。性教育への機運はしぼんだ。日暮さんらは教育への不当介入などとして都などを訴え、13年、都などに賠償を命じる判決が確定したが、手引の「不適切」の記述は消えず重しのままだった。

 「今回、『不適切』が消えたのは大きな一歩。先生たちが自信を持って実践できるよう、支えたい」 (柏崎智子)

◆モデル授業の様子を、子育てサイト「東京すくすく」で詳しく読めます。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報