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【社会】

脳性まひの子「野球できた」 少しの力で打てる「リアル盤」

手作りの大きな野球盤で試合を楽しんだ子供たちや応援団=東京都小平市の小平特別支援学校で

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 体はあまり動かせないけれど、野球がしたい−。そんな脳性まひの小学生の願いが、実現した。かなえたのは、卓上で遊ぶ定番の玩具「野球盤」を十倍にまで大きくした「リアル野球盤」だ。手足が不自由でもわずかな力でボールが打てる仕組みで、障害者支援に携わる企業が試作。三月二十四日には東京都立小平特別支援学校で、子供たちがハンディキャップを忘れ、楽しいひとときを過ごした。 (神谷円香)

 「かっとばせー!」「ナイスバッティング!」。保護者らの熱い応援が響く中、同校体育館で開かれた試合。児童生徒やそのきょうだいら二十七人が、赤い帽子のチームと青い帽子のチームに分かれ、守備はなく攻撃のみのルールでヒット数を競った。青チームの二番として車いすのまま打席についたのは、小学部五年の小薗陽広(はるひ)君(10)。この野球盤が誕生するきっかけをつくった子だ。

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 小薗君は、中学で野球部だった兄の試合を見に行って野球好きに。プロ野球の観戦に行くこともある。ただ、手足のまひで体が思うように動かせず、自分でプレーするのは難しかった。

 二年前から、障害のある子供向けのスポーツ体験教室に通い始めたが、自分より上手に体を動かせる参加者ばかりの中で、自信を失いかけていた。そんな時に出会ったのが、ボランティアで来ていた中村哲郎さん(50)だった。

 鉄道車両整備会社「堀江車輌(しゃりょう)電装」(千代田区)で障害者スポーツの支援事業に携わる中村さんは、小薗君に寄り添い、少しでも体を動かすことの楽しさを説いた。「僕も野球がしたい」。昨夏、小薗君は親しくなった中村さんに思いを伝え、そこから中村さんの野球盤づくりが始まった。

念願の野球の試合でヒットを放ち、喜ぶ小薗陽広君(中)

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 バットを持ち上げて振るのは難しい。このため、バットの先端に付けたひもを軽く引っぱれば、ストッパーが外れて反動がつき、持ち手を軸に回転するような仕組みを考案。直径十センチのビニール製のボールを四十五秒で一周するターンテーブルに載せ、自分でタイミングを狙って打てる仕掛けにした。

 試合当日は、体育館に長机を並べ、段ボールで作った両翼五・四メートルの盤を載せてプレーボール。「スポーツの厳しさも味わってほしい」と、審判役の中村さんが「打席で三十秒以内にひもを引かなければ三振」とのルールも加えた。小薗君は、打席でも、仲間を応援する時にも、うれしくてたまらない様子で笑みを絶やさず、三打数一安打と勝利に貢献。「とても楽しかった」と満足げだった。

 小薗君の母妃路子(ひろこ)さん(51)は「健常者のスポーツを経験でき、多くの人から応援をもらえた」と喜んだ。中村さんは、この試作の野球盤の素材や構造を改良して六月ごろに完成させ、要請に応じて出張するサービスも考えている。

 

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