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【社会】

<税を追う>医療保険 不正受給 不正「氷山の一角」

松本義肢製作所が健康保険組合側に提出した不正受給についてのてん末書

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 足の病気の治療や矯正をする靴型装具を巡り、一億円を超す医療保険の不正受給が明らかになった。保険が適用されるのはオーダーメードの治療靴だが、メーカー側は市販のスニーカーを加工して販売していた。靴やコルセットなど治療用装具を巡る不正受給は、関係者の間で以前から指摘され、今回のケースは「氷山の一角」とも言われる。税金や保険料が投入される医療保険が不正に流出している一端が浮かび上がった。 (井上靖史、中沢誠)

 「私たち患者には知識がない。業者に言われたまま、うのみにしてしまった」。足の裏が内側を向く内反足(ないはんそく)の治療を続ける長男(19)がいる名古屋市の四十代の母親は話した。

 五年ほど前、愛知県内の病院で診てもらい、靴型装具による治療を勧められた。病院内で「松本義肢製作所」(同県小牧市)のスタッフが足を測定。市販のスニーカーに手を入れ、患者に合った足底装具(インソール)を装着した靴を二足十三万円ほどで購入した。

 その後、母親は医師が作成した「装具装着証明書」や領収書と一緒に「療養費支給申請書」に記入して夫の会社の健康保険組合に提出。約九万円が還付された。会社が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の担当者から、今回の松本義肢による不正受給を知らされて驚いた。

 「息子の足が少しでもよくなればと思って履かせていたのに、業者はなぜこんなことをしたのか」

 内反足や足の指が曲がってしまう外反母趾(がいはんぼし)を治療する靴は、患者の症状に合わせたオーダーメードなら保険が適用される。六〜十四歳なら年に一足まで還付を受けることができる。

 不正を手引きしたのは松本義肢だ。保険による還付が認められない二足セットを患者に約十万円で販売しており、患者には「領収書には一足と書きます」と説明していた。

 市販靴を改良した靴型装具の販売は十年以上前に始まったとされる。同社の松本芳樹社長は本紙の取材に「報告は受けており、会社として肯定していた。会社ぐるみと言われれば、そうだ」と話した。

 オーダーメードの靴型装具は通常、十数万円する。加工した市販靴について、松本社長は「一から作る靴より安くできる。福祉団体ではないから(利益追求は)ありますよ」と認める。「内履きと外履きが必要な患者のニーズに応えた。一足はサービスだった」と言いながら、患者には二足分の代金を請求していた。さらに「患者さんのニーズもあるし、保険も通っているんだから何が悪いんだという思いでやっていた」と話した。

 健康保険組合関係者によると、今回の問題が発覚したのは数年前。ある健保組合で、還付請求の際に現物写真の添付を患者側に求めたところ、靴型装具では松本義肢以外にも、大手スポーツメーカーのロゴが入ったスニーカーに、中敷きを入れただけのようなものが多数あったという。

 その関係者は「医師が診ているので不正はないという性善説がこれまで通ってきた。今回は氷山の一角で、不正は見過ごされてきたと思う」と話した。

 

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