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【社会】

<税を追う>治療装具、確認甘く 相次ぐ不正請求 医師証明書、社員が偽造

 外反母趾(がいはんぼし)などの治療に使う靴型装具を巡る医療保険の不正受給問題では、発覚した愛知県の大手装具メーカーのほかにも靴や靴以外の治療用装具を通じた不正請求が相次いでいる。甘いチェック体制や医師の無責任さが不正の温床となっており、国の対策が追いついていない。 (井上靖史、中沢誠)

 企業の健康保険組合でつくる「健康保険組合連合会」(東京)が明かした不正の手口は、次のようなものだ。胸を矯正するコルセットとして、Tシャツ三枚で三万千円。手首を固定する一万八千円のサポーターが実際は指先を切っただけの手袋五枚−。

 治療用装具の保険請求には、医師が業者に装具の作製を指示し、装着を確認した証明書と、業者の領収書が必要となっている。医師のチェックが前提の仕組みだが、そのチェックが骨抜きになっていた。

 加工靴をオーダーメードと偽り不正受給していた松本義肢製作所(愛知)の場合、医師が書くはずの証明書を同社の社員が書いていた。ある医師は「業者から加工靴も保険適用できると聞き、加工靴の作製を指示していた」と話した。

 また、請求を受ける健康保険組合などは、書類審査なので証明書や領収書が偽造されていれば不正を見抜くことは難しい。

 健保連の担当者は「業者は安いコストで販売できる、患者は二足もらえる、医師は診療報酬が取れる。ウインウインの関係が不正を助長してきた」とみる。

 相次ぐ不正を受け、厚生労働省は昨年四月、対策を強化。医師が装具の製造を指示したり装着を確認したりした日付の記入を義務化し、靴型装具には写真の添付も義務付けた。

 それでも根本的な解決には至らず、通知後も不正が後を絶たない。

 医療保険の財政は会社員が納める保険料や税金で賄われている。健保連の担当者は「社会保障費の逼迫(ひっぱく)が指摘されているが、国は消費税や保険料を値上げする前に、不正な受給をなくすよう抜本的な対策に取り組むべきだ」と訴える。

◆健保連、国に確認強化要請へ

 治療用装具を巡る松本義肢製作所(愛知県小牧市)の不正受給問題を受け、企業の健康保険組合でつくる「健康保険組合連合会」は四日、厚生労働省に対し、装具基準の厳格化やチェック強化に向けた制度改正を求めることを発表した。

 健保連が提案する防止策は、医師のチェック体制の見直し。医師は作製した装具を確認することになっているが、不正受給は松本義肢以外にも全国で相次いでおり、医師の確認のやり方や証明書の様式を改めて、チェック強化を図るのが狙いだ。

 ほかにも治療用装具の基準の明確化や適正価格の設定、靴型装具以外にも保険請求の際の現物写真の添付義務化を求めている。

 健保連は、この日、松本義肢が市販靴の加工品をオーダーメードと偽り、患者を通じて全国の健保組合などから千六百四十二件、計一億一千七百万円を不正受給していたことも公表した。

 

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