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【社会】

震災死と向き合う 宮城で被災の写真家・志賀理江子さん個展

東京都写真美術館で「志賀理江子ヒューマン・スプリング」展を開催中の志賀理江子さん=東京都目黒区で

写真

 宮城県名取市で東日本大震災を経験した写真家志賀理江子さん(38)が、東京都目黒区の都写真美術館で個展「ヒューマン・スプリング」(東京新聞主催)を開いている。平成が終わり、令和の時代が近づく中、志賀さんは「あの時、日常は一瞬で奪われた。多くの『死』とどう向き合うか、私にとって避けては通れないテーマ」と写真に込めた思いを語る。

  (岡本太)

 二〇一一年三月十一日、志賀さんは買い物を終えて、アトリエを構えていた名取市の北釜地区に戻ろうと車を走らせていた。海沿いの橋に差しかかった時、前方から真っ黒な波の壁が向かってくる様子が目に飛び込んできた。

 志賀さんは慌てて車をUターンさせ、海と反対方向に逃げた。途中で三歳くらいの男の子と母親を乗せ、ともに一命を取り留めた。

 二年前から拠点として活動していた北釜地区では五十四人が亡くなった。「津波で日常の全てが流され、それまで価値や意味を持っていたものが水の中に沈んだ」と志賀さん。「日常」という幻想を取り払い、心の奥に潜む本能や衝動など人間の真の姿に写真家として迫ろうとしてきた。

 個展は構想から四年がかりで実現。被写体の人たちと試行錯誤を繰り返しながら作り上げた抽象的な写真を展示している。

 志賀さんは愛知県岡崎市出身。東京工芸大を中退後、ロンドン芸術大チェルシーカレッジを卒業。〇八年に写真界の芥川賞といわれる木村伊兵衛写真賞を受賞した。個展「ヒューマン・スプリング」は五月六日まで。問い合わせは、都写真美術館=電03(3280)0099=へ。

 

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