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【社会】

<皇室担当が見た象徴天皇>即位後初会見 「座って」促す姿勢、新鮮に

1989年8月4日、即位後初めて記者会見される天皇、皇后両陛下と立ち上がって質問する筆者=宮殿・石橋の間で

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 「どうぞ座って」。天皇陛下はこう語りかけられ、私に着席を促した。一九八九(平成元)年八月四日に行われた即位後初の記者会見。宮内庁記者会の幹事社として立ち、前半の代表質問をしようとした時のことだった。

 想定外の出来事に、「区切りでもございますので」と立ったまま質問を続け、うまく切り抜けたつもりだった。しかし、会見に出席した外国紙の記者から「陛下の方が開かれている」という声も。私はこの時、昭和の時代と違う陛下の姿勢を読み取ることができなかった。

 憲法は第一条で「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と規定する。この象徴の在り方について陛下は即位後、行動で示してきた。被災地を見舞い、膝をついて被災者と同じ目線で人々の声に耳を傾ける。会見での「どうぞ座って」も同じで、平成の象徴天皇の行動原理を表明しようとしたのだろう。

 昭和天皇がなくなった二日後の元年一月九日の朝見の儀で、陛下は「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」と語った。就任宣言ともいえる朝見の儀で、憲法順守の姿勢を示した陛下の発言は新鮮だった。その年の八月の会見でも「国民とともに憲法を守る」「終戦の翌年に学習院初等科を卒業した私にとって、その年に憲法が公布されたことから、憲法として意識されているのは日本国憲法ということになる」と述べた。

 戦前、昭和天皇は明治憲法下で絶対的な権威と権力を持つ地位にあった。このため、敗戦で天皇制は廃絶の危機に陥った。その反省から生まれた象徴天皇制と戦争放棄を基礎とする現憲法こそ、天皇制存続の支えといえる。

 昨年末の誕生日会見で陛下は「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵(あんど)しています」と語った。「国民とともに憲法を守り」で始まり、弱い立場の人々に寄り添い続けてきた姿に、純化された天皇像をみる思いがする。

 右手正朝=担当期間1987年9月〜92年10月

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 天皇陛下は平成の三十年間、国民と同じ目線で語り、戦争の記憶を継承することにこだわり続けた。本紙の歴代皇室担当記者が間近で見たその姿を随時紹介する。

 

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