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【社会】

<ドキュメント改元>令和手話発表に「感動」 難聴男性ツイート、共感広がる

新元号発表のハプニング映像を前に、手話通訳の必要性について話す木村仁さん=東京都江戸川区で

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 新元号「令和」が発表された1日、東京都江戸川区に住む聴覚障害者の男性がツイッターで発信したメッセージが共感を呼んでいる。NHK総合の生中継で映し出された「令和」の2文字が、手話通訳者の映像で隠れるハプニングが起きた。多くの視聴者は困惑したが、男性は「国民の一大事に手話通訳がいる。すごい進歩」。障害への理解が進んだ平成に思いをはせた投稿は広く拡散した。 (加藤健太)

 「新元号は令和であります」。記者会見した菅義偉(すがよしひで)官房長官が新元号を読み上げて墨書の額縁を掲げると、菅氏の横に配置された手話通訳者の様子を伝える小画面「ワイプ」が二〜三秒、額縁に重なった。NHKは決定的瞬間で手痛いミスを犯したが、手話通訳付きで中継したのはNHKだけだった。この場面でNHK総合の瞬間最高視聴率は27・1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)に達した。

 聴覚障害がある江戸川区の会社員木村仁さん(35)はハプニング直後、「くらげ」の名前で開設しているツイッターのアカウントでつぶやいた。「感動しています。三十年前は平成の字をただ見るしかなかったのに。(今は)国民の一大事に手話通訳がいる。これはすごい進歩ですよ」

 ツイートは二万五千件以上もリツイート(転載)され、賛同を示す「いいね」は七万五千件を超えている。健常者とみられる人たちから「その視点はなかった」「気付かせてくれてありがとう」などの反応が寄せられた。木村さんは「あの位置に手話通訳が映っていたからこそ、思いが広がった」と強調する。

 木村さんは進行性難聴を患い、二十歳の頃に両耳がほとんど聞こえなくなった。少年時代、クラスでテレビの話題についていけなかったつらい思い出を原動力に、字幕など本人が望む意思疎通の手段を尊重する「情報保障」の重要性を訴えてきた。

 昭和から平成に元号が改まると、字幕付きのテレビ番組が増加。全日本ろうあ連盟(新宿区)が、首相官邸の記者会見での手話通訳の採用を要望し続けた結果、二〇一一年の東日本大震災を機に導入された。

 手話通訳のワイプは大きく、より見えやすい位置に表示されるようになった。だからこそ、新元号発表の生中継でハプニングが発生したともいえる。同連盟は五日、「今回の騒動で手話通訳付き放送の歩みを後退させることがあってはならない」との声明を発表した。

 「時に後退しながらも、障害者の福祉は平成で進んだ」と木村さん。すぼめた指先を広げる「令和」の手話とともに語るのは次世代への期待だ。「どんどん花が開いていくように、障害者ができることが一つずつ増えていけばうれしい」

 

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