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【社会】

夜間中学 73歳前向けた 江戸川の田島さん 皆勤で卒業、学び直す

夜間中学を卒業し、新たに始まる高校生活について話す田島秀男さん=3日

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 さまざまな事情で十分に教育を受けられなかった人が通う夜間中学のニーズが高まっている。中学既卒者も学べるようになり、東京都江戸川区では、七十歳で入学した田島秀男さん(73)が地元の夜間中学を今春卒業した。「勉強できなかった劣等感をぬぐえた」。学び直しで自信が芽生え、九日に高校に進学する。 (加藤健太)

 満開の桜を背に、新しい学びやでの希望があふれる。「数学をもっと深く学びたい」「努力すればいろんなことが変わる」。三年前まで田島さんが口にできなかったという、前向きな言葉があふれ出た。

 少年時代、二千五百メートル走の最中に腎臓病で倒れ、中学入学直後から半年、登校できなかった。スタートでのつまずきが響き、勉強についていけないまま卒業。高校に進んだが、自信を取り戻せず半年で退学した。

 せっけん工場や警備会社など職を転々としながら、マイホームを構え、三人の娘を育て上げた。それでも「勉強していたらいろんな仕事を選べたのに」とずっと後悔が付きまとった。

 七十歳を迎えて人生でやり残したことを考えた。「弱い自分を変えたい。殻を破るには学び直すしかない」。周囲に過去をさらけ出す恥ずかしさを振り払い、地元の区立小松川第二中学校夜間部の門をたたいた。

 さまざまな世代の同級生とともに、昼間の中学生と同じ九教科を学んだ。授業が始まる午後五時半より三時間早く登校して自習を欠かさず、苦手な数学は「とことん書いて頭に入れた」。ひたむきな姿勢を、横沢広美校長は「全ての教科で努力を惜しまなかった」とたたえる。

 田島さんは三年間を皆勤した。数字への苦手意識が和らぎ、新聞や雑誌の経済記事にも興味がわくようになった。九日には都立江戸川高校の定時制に入学する。「勉強が生きがい。大学にも行きたい」。学びへの意欲をみなぎらせた。

田島さんが夜間中学で使ったノート=いずれも東京都江戸川区で(芹沢純生撮影)

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◆全国33校のみ 受け入れは拡大

 夜間中学に入学できるのはかつては義務教育を終えていない人に限られていたが、国が受け入れ対象者を拡大。田島さんのように中学を卒業した人も通えるようになった。今月、千葉県と埼玉県に各一校が開校し、全国で九都府県に三十三校となったが、国が目標とする「一県一校」には程遠い。

 夜間中学が門戸を広げた背景に、不登校の子どもの増加がある。これまで各地のボランティアらが学び直しの場を提供してきたが、不登校の小中学生は毎年十万人以上。文部科学省は二〇一五年度に受け入れ拡大に動いた。

 外国人の学びの需要が高まっている事情もある。夜間中学には、十分な教育を受けずに来日した若者らも就職や定住の足掛かりにしようと通っており、現在は生徒の約八割が外国籍。外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が一日に施行され、希望者はさらに増えるとみられる。

 ニーズの高まりを受け、文科省は「一県一校」の設置目標を掲げて自治体に公立夜間中学の設置を促している。首都圏でみると、東京都内に八校あるものの、神奈川と千葉県に二校、埼玉県に一校で、茨城、栃木、群馬県にはない。設置には、教員の確保や地域ごとのニーズ把握の難しさなどが課題になっている。

 

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