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【社会】

<統一選 縮む地方議会>(下)村民に危機感/兼業規定制定 過疎でも民主主義機能

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 「過疎でも民主主義は機能する」。五年前、前橋市から高知県大川村に移住した男性(28)は、十六日に告示される村議選(定数六)に立候補する意思を固めている。離島を除き人口が最も少ない大川村では二〇一七年、議会維持をあきらめかけた。住民らによる町村総会まで検討した村は、この二年で村民の村政への関心が高まり、十日の事前審査には新人三人を含む七人が姿を見せた。

 「議会廃止へ」。一七年六月、大川村が町村総会の設置に向けた検討を始めることを表明すると、全国で衝撃的に報道された。人口約四百人の村には取材が殺到。過疎地域を抱える中国のメディアも訪れた。

 和田知士(かずひと)村長(59)は当時の心境について「無責任、無関心にならないでほしいという村民へのメッセージだった」と振り返る。前回の村議選は現職全員が無投票で再選。議会を傍聴する人はまばらだ。「四年前の時点で三人が七十五歳以上なのに引退したくてもできない。次の選挙はどうなるのか。議会を維持できない」との危機感があった。

 銅の採掘などで栄えた大川村は、一九六〇年代は四千三百人を数えたが、早明浦(さめうら)ダムの建設で一部の集落が水没、鉱山の閉鎖も重なって人口が流出し、議員定数はどんどん縮小した。

 立候補を検討している冒頭の男性は、二年前の町村総会の騒動で、議会が危機を迎えているという村の現状を知った。「当時は、議員は年配の人がやるものと考えていた」。地域おこし協力隊として移住し、その後も集落支援員として村内を巡回する。地元の女性と結婚し、まもなく子どもが生まれる。村に住み続けるつもりで「村の将来は自分たち次第なんだ、と思うようになった」と話す。

 昨年十月から有志を集めて村の課題を議論する勉強会を開催してきた。「次の選挙は、村が提起した問題に回答を示すとき。過疎の地でも民主主義は機能すると見せたい」。選挙戦になることを期待している。

 地方自治法では、議員は自治体との請負関係が主要部分を占める個人や法人の役員との兼業を禁じている。立候補したい人が兼業の問題でためらうことがないよう村議会は三月、制限対象にならない法人を明示する条例を制定。森林組合や第三セクターの公社などが対象外になると公表した。村の現状を「人口は少ないが、いまは決してなり手不足だとは思わない」と和田村長。「村民も村議も『議会を存続したい』と真剣に考えてくれた」と胸をなで下ろす。

 立教大の外山公美教授(行政学)は「これからの時代、いろいろな形態から自治体の規模に合った制度を選べるよう選択肢が必要だ」と指摘する。大川村の現状を歓迎しつつ「国は地方に寄り添い、どうしたら議員のなり手が出るのか、真剣に検討するべきだ」と話す。(この連載は、山田祐一郎、市川勘太郎、渡辺聖子、梅野光春が担当しました)

<町村総会> 議会を廃止して有権者が予算などを直接審議する仕組み。地方自治法94条で「町村は、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」と規定。95条で「運用は議会の規定を準用する」としているが、具体的ルールは定めていない。東京都の離島・八丈小島の旧宇津木村が1951〜55年に総会を実施。長野県王滝村では2005年に総会を設ける条例案を議員が提案したが否決された。総務省は有識者による研究会を立ち上げたが、最終的に「総会の開催は困難」と結論づけた。

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