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【社会】

障害年金、病名判明前も支給を 難病指定外の女性が国提訴

倦怠感や体の痛みで一日の大半をベッドの上で過ごすという網美帆子さん=宇都宮市の自宅で

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 突然激しい倦怠(けんたい)感や痛みに襲われる慢性疲労症候群(CFS・筋痛(きんつう)性脳脊髄炎)と診断された宇都宮市の女性が、病名が分かるまでの間、障害年金を受け取れないのは不当だとして、国を相手取り、不支給処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴した。病気の認知度が低く、「怠けているだけではないか」との偏見も根強い。患者団体は「病気について正しく知ってほしい」と訴える。 (木原育子)

 原告は、宇都宮市の網美帆子さん(44)。訴状などによると二〇一二年九月、激しい倦怠感や微熱、不眠などから、病院に通い始めた。計十カ所以上の病院を受診しても病状は改善せず、一六年二月、東京都内の病院でCFSと診断された。

 網さんは一六年十月、初診日を一二年九月として障害年金を申請。しかし日本年金機構は、診断された一六年二月より前の分は、障害年金を支給しなかった。

 網さんは専門の医師から「一二年九月の症状はCFSの初期症状であったと考えるのが妥当」などとする診断書を取得。二度、社会保険審査官などに不服を申し立てた。しかし、いずれも棄却され、今年二月、障害年金百六十万円の支給を求めて提訴した。厚生労働省年金局給付事業室は、取材に「コメントすることができない」としている。

 原告代理人の和泉貴士弁護士は「病気が知られていないため、患者に不利益が生じている」と主張。患者らでつくるNPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」によると、CFSは国内に約十万人の患者がおり、三割は寝たきりに近い状態とされる。免疫細胞の異常などで起きるとされ、研究が進むが、明確な原因は分かっていない。

 国の指定難病の対象外で、専門的な医師は十数人しかいないという。

 同会の篠原三恵子理事長は「診断されるまでに何年も何十年もかかる人が多く、今後このような訴訟が増える可能性がある。年金が適切に支給されるようにしてほしい」と話している。

◆仕事を失い、ほぼ寝たきり 周囲から疑われ、偏見にも苦しむ

 「病名がついていないからといって、障害年金が支給されないのはおかしい」。網さんは自宅ベッドから起き上がれず、苦しそうに声を絞り出した。毎朝七時ごろに目覚めても、起き上がるのに六時間かかる。疲労感、倦怠(けんたい)感があり、骨などに痛みが走る。ほぼ寝たきりの状態で暮らす。

 発症前は好きなロックバンドのライブに行くため、全国を駆け回るほど元気だった。病気になるまでは工場で派遣社員として働いていたが、失職。貯金は治療で使い果たし、今の収入は毎月約二万円の重度心身障害者手当だけだ。父親(79)、母親(75)と三人暮らしで、両親の年金が頼りだ。

 都内の病院へ通うのも大変だ。極度に疲れるため、十メートル歩くのに二十分かかる時もある。食事中、魚の小骨を箸で取り除くだけでも疲れ、においや音にも過敏になり、すぐに吐き気をもよおす。「情けない」と泣きたくなる。

 体調の良い日と悪い日の差が激しく、歩ける日もある。二〇一七年二月に身体障害者手帳を取得した際は、周囲から「本当に病気か」と疑われた。「怠けているだけでは」という偏見にも苦しんできた網さん。「これ以上、同じ症状の人が苦しまずに済むように」と考えて提訴した。「回復したら、友人とバンドのライブに行く」のが、ささやかな夢だ。

 

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