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【社会】

被災地へレディー・ゴー 警視庁警備犬、初のメス

訓練する警備犬オリーと垂水智美巡査長=東京・多摩地区の警視庁訓練所で

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 抜群の嗅覚を武器に、行方不明者の捜索や爆発物の探索で力を発揮する警視庁の警備犬に今春、初めて雌の仲間が加わった。ジャーマンシェパードのオリー(一歳)。訓練を担当するのは、熊本県で生まれ育った垂水(たるみず)智美巡査長(28)だ。三年前、熊本地震で故郷の人たちの悲しみに触れた経験が糧になっている。女性コンビは災害現場での活躍を誓う。「今度は私たちが現場に向かいます」 (木原育子)

 「オリー、捜すよー」。今月上旬、東京・多摩地区にある警視庁の訓練所。垂水さんのよく通る声が響いた。ロッカー内の爆発物のにおいをかぎ分ける訓練。オリーはいくつかの扉に鼻先を近づけてクンクン。においを感知した場所で「伏せ」の姿勢を取った。

 「おー、いいねぇ」。垂水さんがオリーの頭を何度もなでて、ご褒美のボールを渡した。オリーは尻尾をブンブン振って、ご満悦の様子。「オリーの目を見て、伝わるまで褒めきることが大切です」と垂水さんもうれしそうだ。

 警視庁の警備犬は、ジャーマンシェパードとラブラドルレトリバー計約二十頭。これまでは、犯人の制圧に有利とされる体が大きい雄ばかりだった。だが、雌は一回り小さくても、スピード感は雄に勝るとも劣らない。災害現場では、小柄な分だけ狭い場所に入りやすく、優しい顔立ちは被災者らに受け入れられやすい面もある。

 警備犬を担当して二十八年になるベテラン職員の山川良博さん(67)は「さまざまな個性が集まって組織は強くなる。警備犬の現場にも『女性の波』が来ています」と感慨深げだ。小松就正(なりまさ)警部補(47)も「オリーのアイコンタクトを取れる繊細さは、現場で生きるはずだ」と太鼓判を押す。

 警備犬は、基本的に一人のハンドラー(担当警察官)が一頭を受け持つ。オリーは三月に配属されたばかりで、当初は環境になじめず、警戒心からよくほえた。だが、垂水さんが休日も顔を出して餌をやったり、遊び相手になってあげたりするうちに、オリーは少しずつ慣れてきた。信頼関係を育む毎日だ。

 垂水さんは熊本県山鹿市出身。二〇一五年から警備犬を担当している。一六年四月の熊本地震発生の直後、警視庁の女性警察官でつくる被災者支援部隊「きずな隊」に志願。十日間ほど県内の避難所を巡り、困り事の相談に乗ったり、犯罪被害に遭わないよう注意を呼び掛けたりした。

 この時、被災者の八十代の女性が、近所の知人を亡くしたと、子どものように泣く姿に「自分にやれることはないかと考えた」。今では、「涙を流す人が少しでも少なくなるように、オリーを早く一人前に育てて、災害現場で活躍したい」と心に誓っている。

 オリーは警視庁の内部検定に合格すると、現場に出動できる。「二人三脚」の訓練は始まったばかりだ。

<警備犬> 国際会議や大型イベントの爆発物捜索、要人警護、犯人制圧などで出動する。警視庁が1980年に初めて運用開始。千葉、埼玉、愛知県など6都道府県警が導入している。災害救助では、2011年東日本大震災、14年広島土砂災害、17年メキシコ大地震などで派遣。04年新潟県中越地震で2歳男児の救出につなげたレスター(15年に死ぬ)の活躍でも知られる。

 

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