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【社会】

他人のiPS網膜 経過良好 世界初の臨床 移植後1年

「滲出型加齢黄斑変性」の患者に移植された網膜細胞のもとになった他人のiPS細胞=理化学研究所提供

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 理化学研究所と神戸市立医療センター中央市民病院などのチームは十八日、他人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った網膜の細胞を、重い目の病気の患者五人に移植した世界初の臨床研究について、網膜細胞が定着するなど術後一年の経過は良好と明らかにした。軽い拒絶反応が一人に起きたが薬剤で抑え込んだという。詳細な術後経過の公表は初めて。

 理研の高橋政代プロジェクトリーダーは「安全性を確認できたと考えている。どのような症例に使用すると効果が高いのかなど、新たな臨床研究に入りたい」とした。

 臨床研究は安全性や有効性を検証するのが目的。チームによると、五人は網膜に障害が生じ、視力が徐々に低下して失明することもある「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」。二〇一七年三月以降に順次、網膜細胞を含む溶液を注射器で目に注入した。四人の視力はほぼ維持され一人は向上した。iPS細胞で懸念される腫瘍化は見られなかった。

 一例目の兵庫県の男性は拒絶反応の影響で網膜にごく微量の水がたまったが、薬剤のステロイドを投与した結果、改善した。

 臨床研究では、京都大で備蓄している特殊な免疫の型を持つ他人の細胞から作った、拒絶反応が起きにくいiPS細胞を使用。患者本人の細胞から作るiPS細胞を使うより準備期間が短く、費用も安くなる利点がある。チームが昨年一月発表した、網膜がむくむ合併症が起きた二例目の男性に関しては改めて「移植手術による合併症で、iPS細胞への拒絶反応や、副作用ではなかった」とした。

 高橋氏は十八日、東京都内での日本眼科学会で研究成果を発表した。同氏らは一四年、患者本人のiPS細胞から作った網膜細胞の移植を実施している。

<加齢黄斑変性> 目の奥で光を受け取る網膜の中心部にあり、物を見るときに中心的な役割を果たす黄斑部が老化し、視力が低下したり、視野の真ん中がゆがんだりする病気。光を感じる細胞に栄養を与える色素上皮の組織が縮む「萎縮型」と、異常な血管ができて色素上皮が傷む「滲出(しんしゅつ)型」がある。日本人は滲出型が多い。

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