東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 4月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<統一地方選>街頭演説に手話通訳を 聴覚障害者「参政権保障されず」

出陣式で立候補者の演説を手話通訳する女性=東京都世田谷区で

写真

 統一地方選も終盤を迎え、各地の街頭で候補者が演説を繰り広げているが、耳の不自由な人はその訴えを直接聞けない。公職選挙法では二〇〇〇年から手話通訳者への報酬を認めているが、通訳を付ける義務はなく、対応する候補者はまだ少ない。聴覚障害者の団体は「制約のある環境で、参政権が保障されていないろう者はたくさんいる」と訴える。 (神谷円香、原尚子)

 東京都最大の人口約九十一万人を抱える世田谷区で、区長選と区議選が告示された十四日。「世田谷区聴覚障害者参政権保障委員会」の本多忠雅(ただまさ)委員長(64)は、区長候補の街頭演説に耳の不自由な仲間とともに訪れた。選挙カーの上で演説する候補者と、車の前で通訳する手話通訳者の手を見ながら政策に耳を傾ける。

 十六日夜はもう一人の候補者の手話通訳付き個人演説会へ。委員会は告示前、区長選と区議選の全陣営に手話通訳の配置を依頼していた。本多さんは「最終日までに区議も含め全員のを聞き比べて政策を判断したい」と説明する。

 世田谷区では一九九〇年ごろから、関係団体が率先して手話通訳を要望してきた。中野区や練馬区も同じ取り組みがあり、活動は他の地域にも広がったが、全国的にどのくらい手話通訳が付いているかは不明だ。今回の統一選では、世田谷区の区長候補二人は一部演説で配置したが、定数五〇に七十五人が出馬した区議選では、数人にとどまっている。

◆公選法では義務なし

 手話通訳者への報酬は政令で一人一日一万五千円以内と定められている。課題は、公選法では手話通訳者が便宜上、「運動員」とみなされること。選管など公的機関からの紹介はできず、候補者が個別に依頼し、報酬を支払う形だ。また、本多さんとともに委員会で活動する区登録手話通訳者の一人は「中立の立場なのに、その候補を応援していると思われると困る」という課題もあると打ち明ける。

 公選法では、今年三月の改正でようやく都道府県議選と市区議選でも候補者のビラ配布が解禁され、聴覚障害者への情報が増えた。

 テレビの政見放送では、全日本ろうあ連盟などの要望もあり九五年の参院選比例代表の放送から手話通訳が配置可能になり、昨年からはすべての放送に認められた。一六年からは演説などの要約筆記にも報酬を支払えるようになった。

 しかし、聴覚障害者にとって電話と同じ役割のファクスは選挙運動で一切使えず、情報から取り残される一因になっている。視覚障害者の場合、ビラの点訳への報酬が認められずにいる。障害者の参政権が十分に保障されるには、各候補者の意識だけでなく、公選法の壁もまだ立ちはだかっている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報