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【社会】

Jヴィレッジ再開 復興イメージ先行懸念 高い線量、鈍い帰還…課題山積

全面再開した、福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(手前)=20日

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 東京電力福島第一原発事故後に収束作業の拠点となった福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」が二十日に全面再開した。来年の東京五輪では聖火リレーの出発地となり、「復興五輪」を掲げる安倍政権は、世界に福島復興をアピールする機会ととらえるが、周辺地域では避難の長期化で住民の帰還が進まないなど課題が山積している。「復興の象徴」として強調されすぎれば、課題解決がおろそかにならないかとの懸念もある。

■前線基地

 Jヴィレッジは県沿岸部で原発十基を稼働させていた東電が整備し、地域振興を目的に県に寄贈した施設で、一九九七年に国内初のサッカーのナショナルトレーニングセンターとして開設された。今も運営は東電が出資する会社が担い、東電と関係が深い。事故前は年間約五十万人が訪れたが、原発事故で状況が一変。

 第一原発から南に約二十キロと近いため、直後からピッチは作業車両の除染スペースなどとして使われた。被ばくの有無を調べる装置や作業員用の宿舎が置かれ、事故収束のため政府や東電が使う「前線基地」となった。

 元日本代表の中沢佑二さんは二十日、当時の心境を「震災の対応とはいえ、サッカー選手として芝のピッチに車が入るのは悲しかった」と語った。

東京電力福島第一原発事故収束作業の拠点だった2012年2月26日当時

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■使命

 営業再開に際して県や地元自治体などは、県沿岸部での雇用創出や交流人口の拡大、復興の姿を国内外に発信することなどを「使命」と掲げ、音楽イベントやラグビーなど、サッカー以外での利用促進も目指している。

 ホテルや全天候型の屋内練習場が新設され、同練習場では小型無人機ドローンの操縦者資格が取れる講座が開かれた。国や県が掲げる「福島イノベーション・コースト構想」と歩調を合わせ、地域の復興につなげる狙いだ。

20日、8年ぶりに全面再開した福島県のサッカー施設Jヴィレッジ。ピッチの上で子どもが芝の感触を楽しんだ

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■しらけムード

 「努力を重ねれば再生を果たせる。復興五輪の象徴となる」。内堀雅雄知事は三月の記者会見で、聖火リレーの出発地となったJヴィレッジに県全体が復興に向かう姿を重ねた。しかし四月上旬には当時の桜田義孝五輪相が「復興以上に自民党議員の方が大事だ」と発言。安倍晋三首相は桜田氏を更迭したが、被災地では「本音が漏れた」としらけムードも漂う。

 県沿岸部を中心に課題は山積する。放射線量が高く原則立ち入り禁止の帰還困難区域が残る六町村では除染などを集中的に進め再び人が住めるようにする「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)の整備が始まったが、拠点外では具体的な復興の道筋が描けぬままだ。

 避難指示が解除されても住民の帰還は鈍い。町の全域が避難区域に指定された浪江町は二〇一七年三月末に町面積の約二割で避難指示が解除されたが、避難が長期に及んだ影響などで今年三月末現在、居住率は約7%にとどまる。

 浪江町行政区長会の佐藤秀三会長(74)は「生活が便利な避難先での定着が進んでおり、帰還は思うように進まない。一度壊れたコミュニティーを元に戻すのは難しい」と認める。

 原発事故後の福島の現状に詳しい立命館大の丹波史紀准教授(社会福祉学)は「復興を発信することも大切だが、ハード面だけでは復興の進み具合は測れない。被災者のなりわいや地域コミュニティーの再建といったソフト面での復興が進んでいるのか、検証が必要だ」と指摘した。

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