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【社会】

苦しみ60年、けじめつかぬ 札幌の男性「裁判続ける」 強制不妊救済法成立

強制不妊問題に関する新聞記事を読む小島喜久夫さんと妻の麗子さん=22日、札幌市北区で

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 傷が癒えるわけではない。それでも闘いは続ける。二十四日に成立した救済法では、謝罪の主体が「われわれ」とされ、国の責任が曖昧なままだ。旧優生保護法を巡る国家賠償請求訴訟の原告として、初めて実名を公表した札幌市の小島喜久夫さん(77)は、今までの訴えが無視されたと憤る。「これでは、苦しかった六十年にけじめがつけられない。絶対に裁判で勝たなければ」

 ちゃぶ台を挟んでテレビの時代劇を見ながら、コーヒーとたばこ。「俺、昔は結構もてたんだよ」。小島さんがおどけてみせると、妻の麗子さん(76)がすかさず「何言ってんの」とつっこみを入れる。四十年連れ添ってきた二人の日常だ。

 不妊手術のことを麗子さんに打ち明けたのは約一年前。養父母とうまくいかず荒れていた十九歳ごろ、突然警察官に病院へ連行された。診察もなく「精神分裂病」とされ、体にメスを入れられた。

 誰にも言えず、麗子さんにも「おたふくかぜで子どもができない」と隠した。タクシー運転手の仕事で、客を手術された病院まで乗せたこともある。親子連れを動物園に送った時は「自分にも子どもがいたら」とさみしさが募った。

 「国に謝罪してほしい。皆さんも応援してください」。この一年、集会や取材で繰り返し訴えてきた。車いすで各地を回り、疲労で体調を崩したことも。ただ支援の輪は広がり、他に顔や名前を明かす原告も現れた。

 一方、国には「何も伝わっていない」と感じる。謝罪の主語を曖昧にし、一時金を三百二十万円とした救済法にはあきれかえった。「あんなことをされて、すぐに解決できるわけがない」と、スピード重視の姿勢を嘆く。安倍晋三首相の談話では、政府として「おわび」が述べられたが、責任を認めようとしない裁判での姿勢と矛盾し、違和感があるという。

 気丈に振る舞うが、昨年秋に手術された病院を訪れると、トラウマと悔しさで涙が止まらなくなった。「自分と同じような人を、もう一人も出したくない」。納得がいくまで裁判を続けるつもりだ。

 

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