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【社会】

「全身全霊」支える側も 皇后さまら退位の日まで

在位30年記念式典で原稿を読み間違えた天皇陛下をサポートされる皇后さま=2月24日、東京都千代田区の国立劇場で

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 退位の意向をにじませた二〇一六年八月のビデオメッセージで「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないか」との危惧を、率直に話された陛下。皇后さまら周囲も「全身全霊」で支え、退位の日を迎えた。

 二月二十四日、東京・国立劇場で開かれた在位三十年記念式典。テレビで中継される中、お言葉を述べた陛下は終盤に差しかかると、内容が冒頭に戻った。読み上げ済みの原稿を、再び手にしたようだった。異変に気づき「違います」と指摘する皇后さま。「なんで、あ、そうか」。陛下は指摘を受けて元に戻った。

 式典や訪問先で、いつも陛下の左腕に右手を添える皇后さま。組まれた腕と手は、時に陛下に次の行動を促すかのようだった。この時も皇后さまの機転で、大事に至らず済んだ。宮内庁の西村泰彦次長は式典後の会見で「皇后さまのさりげない所作に、両陛下が手を携えて歩んできたことを痛感した」と語り、多くのメディアもほほ笑ましい場面として好意的に伝えた。だが側近の一人は「どう報じられるか、ドキドキした。退位があと一年早ければ…」と複雑な表情を見せる。

 陛下は八十五歳。こうした光景は珍しいことではなくなっていた。昨年五月、国賓として訪れていたベトナムのクアン国家主席=当時、同年九月死去=を歓迎する宮中晩さん会。スピーチで同国訪問時の思い出などに触れるはずが、原稿を一枚丸々読み飛ばしてしまう。陛下は気付かずにそのままスピーチを続けたが、晩さん会終了後、山本信一郎長官ら幹部が険しい表情で協議する場面が見られた。

 一五年の全国戦没者追悼式では黙とう後に予定されたお言葉をその前に述べ始め、年末の誕生日会見では「年齢というものを感じることも多くなり、行事の時に間違えることもありました」とふり返った。

 陛下が周囲に初めて退位の意向を漏らしたのは一〇年七月。それから九年近い歳月が過ぎた。ある幹部は「こうなる前に退位したいというのが、ご本人の思いだったはず」とおもんぱかる。同時に「何かあったら『われわれのお支えが足りない』ということ」と語る。より近くで支える侍従職では近年、行事の前には「くどいほど陛下に手順を確かめるようにしていた」(関係者)という。

 退位まで全身全霊で象徴の務めを果たす意向だった陛下。体力、尊厳…。そろそろ限界に近づいていたのかもしれない。今年も公務は例年通りのペースだった。加えて即位三十年、結婚六十年の行事もあり、さらには退位関連行事も続いた。別の側近は「近くで拝見していると本当にお疲れだろうなと思う。五月になったら少しゆっくりしていただく時間が必要だ」と話した。 (荘加卓嗣)

 

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