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【社会】

池袋暴走事故1カ月 進まぬ高齢運転手対策

 東京・池袋で乗用車が暴走し、母子2人が死亡した事故から19日で1カ月。相次ぐ高齢ドライバーによる事故を防ごうと、警察庁は、高齢者に対する実車試験導入や、自動ブレーキ機能などを備えた「安全運転サポート車(サポカー)」に限定した免許の導入を検討しているが、実現にはまだまだ課題も多い。 (福岡範行)

 「判断速度が遅く、ブレーキを踏む力が弱かったのはダメだね」。今月十一日、警視庁交通安全教育センター(東京都世田谷区)であった「シルバードライバーズ安全教室」。参加した原島貞夫さん(79)=東京都福生市=は苦笑いを浮かべた。

 参加者は、歩行者の飛び出しを想定した急ブレーキや、片方の車輪を幅三十センチの段差に載せて走る車両感覚の確認などに臨んだ。自家用車を使い、助手席の指導員から助言を受けた。

 原島さんは免許更新時、認知機能検査で問題はないとされたが、加齢による衰えを自覚し、自主的に運転技能をチェックしている。

 とはいえ、こうした高齢者ばかりではない。この日、安全教室に参加したのは四人のみ。月一回平日に開催してきたが、昨年までの五年間で参加者は計二百二十七人にとどまっている。七十五歳以上のドライバーは免許更新時、認知機能検査と高齢者講習を受ける。運転に必要な反射神経などの身体機能は年齢を重ねると衰えるが、免許取り消しになるのは、認知症と診断された場合だけだ。

 池袋の事故で車を運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(87)は二年前の免許更新時、認知機能に問題はないとの判定を受けていたとされる。

 警察庁によると、昨年、死亡事故を起こした七十五歳以上の運転手のうち約半数は、直近の認知機能検査で「正常」と判断されていた。こうした傾向に対し、日本神経学会などは一昨年一月、「運転技能を実車テスト等により判断する必要がある」と提言している。

 ただ、七十五歳以上の免許更新者は全国で年間二百万人以上おり、今後も増加が見込まれる。警察庁は有識者会議で実車試験導入の可能性を探っているが、担当者は「全員に綿密な実車試験を課すのは難しい」と頭を悩ませる。免許を取り消す場合、具体的基準をどう定めるかという問題もあるという。

 警察庁は、自動ブレーキ機能などを備えた「サポカー」に限って運転を認める「限定条件付き免許」の導入も検討中だ。アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を防げると期待は高まるが、担当者は「メーカーで性能などにばらつきがある中、統一的な条件を設けるには、さらに検討が必要」と説明する。

 警察庁は当面、免許返納を促すとともに、運転技能をチェックしてもらう取り組みを重視。警察官らが高齢ドライバーや家族からの相談に応じる各都道府県警の「運転適性相談窓口」の活用を呼び掛けている。

 

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