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【社会】

「辞め方改革」退職後も関係維持 ベンチャーが新サービス 将来の協業へ支援

会社からの「卒業」セレモニーで社員たちからにぎやかに送られる井上敦生さん(中央)=東京都千代田区のレッドフォックスで

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 英語で卒業生を意味する「アルムナイ」という言葉が企業の間で注目され始めた。退職した社員を「卒業生(アルムナイ)」と捉えて関係を維持し、将来の協業につなげる取り組みだ。コンサルティングとソフトウエアの会社「ハッカズーク」(東京都新宿区)は、退職する人を見送る「卒業」セレモニーなどのサービスを提供する。キャッチコピーは「辞め方改革」。 (神谷円香)

 四月下旬、千代田区のシステム開発会社「レッドフォックス」で、システムエンジニア(SE)井上敦生(あつお)さん(38)の「卒業」セレモニーがあった。大学院を出て十四年勤めた井上さんの仕事ぶりを振り返るスライドショーの後、大学の式服をイメージした黒ガウン姿で同僚らと握手した井上さん。SEのキャリアを生かして転職するが、「機会があればまた一緒に仕事をしたい」と感謝した。

 同社の別所宏恭(ひろゆき)社長(53)は「人材の流動化は良いことだ。古巣の会社が活躍し、アルムナイにとってここにいたことがステータスになるのが大事」とアルムナイを歓迎する。

 同じ業界にいれば、また何かしらの結びつきが生まれるかもしれない。会社の特徴をよく知る元社員からは的確な情報提供やアドバイスを受けることができるし、独立すれば業務委託という選択肢もある。ハッカズークの鈴木仁志社長(39)は「退職による引け目は社員も会社もお互いにある。つながる前提ならきれいに辞めることができる。逆に言えば、辞め方を変えないと、つながる人は増えない」と強調する。

 鈴木さんが社員の辞め方を考えるきっかけは自身の前職での経験だ。人事アウトソーシング会社「レジェンダ・コーポレーション」で他社の採用を請け負ったものの、離職率が高く、辞めてどこに行ったかも分からなかった。「自分も辞めていく人にきつく当たっていた。後から連絡も取りづらかった」と反省した。

 退職と同時にハッカズークを立ち上げたのは二〇一七年七月。鈴木さんは退職する際、アルムナイとして古巣と良好な関係を築くことを意識し、引き継ぎに時間をかけた。その結果、今は前職と同様の業務を委託で請け負う。ハッカズークは、アルムナイと古巣の情報公開用のプラットフォームサービスも提供しているが、レジェンダ社は顧客の一つだ。鈴木さんの元同僚で、レジェンダ社の採用支援事業部の樋口新(あらた)部長(40)は「辞めたらもう縁を切るというスタンスはない。辞めた人に全社ミーティングに出てもらうこともある」と話す。

 会社と関係がこじれた社員に代わる退職代行サービスも耳目を集める中、鈴木さんはアルムナイの良さを感じている。「前職で身に付け、後輩に言えることはたくさんある。また一緒にやると新しい発見もある」

元同僚の樋口新さん(中)らと和やかに打ち合わせをする鈴木仁志さん(左)=東京都新宿区のハッカズークで

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