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【社会】

<税を追う>製薬マネー「営業道具」に 奨学寄付金「医師の貢献度で」

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 製薬業界から大学医学部や医療系の各学会へ年間三百億円近い寄付が行われていた。特に医療界の有力者が集う大学医学部に研究費として提供する「奨学寄付金」は、使途に明確な制限がなく、教授らの間では「使い勝手が良い」と重宝がられてきた。かつて医師への過剰な接待や抱き込みが批判されてきた薬の売り込み競争。近年は業界で透明化に取り組むが、製薬マネーを営業の有力な「道具」に使う実態はまだ残っている。 (「税を追う」取材班)

 「折り入って相談があります」。中堅製薬会社の営業担当者(MR)は担当する大学病院の医師から、そんな電話を受けたことがある。奨学寄付金の無心だった。別の医師からは「寄付金を入れないと、薬を使わないぞ」と高圧的に求められたこともあった。

 「奨学寄付金を出すかどうかは本社の判断で、医師の貢献度にかかっている。やはり薬の売り上げが多い場合はランクが上がる」とこのMR。「貢献度が高ければ本社の担当者を連れて行くが、低ければ支店長が丁寧に断る」

 日本製薬工業協会(製薬協)は二〇一四年、会員企業に「奨学寄付金の提供の在り方」を通知。「社内の営業部門から独立した組織で利益相反を十分確認し(寄付を)決定する」とした。

 「利益相反」とは、医師らの研究グループが製薬企業から資金提供を受けている場合、薬の処方や臨床研究が企業の利益のために行われ、患者の利益が損なわれるのではないかと疑われる状況を指す。通知は、患者の不利益にならないよう求めた。

 製薬会社の中には、奨学寄付金を公募にし、営業部門から切り離すところが増えたが、大手メーカーの幹部は「いまだに奨学寄付金を営業部隊の交際費のように使っている会社は少なくない」と打ち明ける。

 先のMRは「製薬会社には販売に力を入れる『注力品目』があり、新薬が発売された場合など、時々で変わる。奨学寄付金は、注力品目が含まれる診療科の医師に優先的に提供されることが多い」と話す。

 大学側も奨学寄付金に頼りがちな実情がある。「大学院生が学会に出席するための旅費や参加費に充てていた」。そう話すのはある国立大の名誉教授だ。

 「何十人と抱える大学院生のために、奨学寄付金を稼ぐことが教授の仕事だと思っていた」。ただ、薬を使う見返りに寄付金を受け取る状況に、忸怩(じくじ)たる思いを抱いていたという。

 「賄賂と大して変わらなかった。利益相反の対象である製薬会社が出すお金はやはり筋違いですよ」

 

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