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【社会】

<税を追う>製薬界 講演・説明会に年1500億円 費用丸抱え、医師に接近

 製薬会社が薬の普及や正しい処方を広めるために開く講演会や説明会に、総額1500億円を超す「製薬マネー」が注ぎ込まれていた。講師を務める医師への謝金などで272億円をはじめ、参加者全員の交通・宿泊費や飲食費、病院に届ける高価な弁当−。費用を丸抱えする方式に「薬の処方に影響するのでは」と危惧する医師もいる。 (「税を追う」取材班)

 東京都内の有名ホテルのホールに、全国から集まった数百人の医師。壇上で新薬の臨床研究に携わった大学教授らが「この薬には、こうした特徴があります」と薬の効能や副作用を説明する。

 講演が終わると、立食形式の情報交換会へ。医師は料理や酒を味わい、製薬会社の幹部やMR(営業担当者)があいさつに回る−。製薬会社の社員は講演会の一般的な様子をそう説明する。

 大学教授クラスの講師謝金は十万〜二十万円。参加者の交通・宿泊費や飲食費も製薬会社持ちだ。

 「宿泊も可能な限り同じホテルにするので、一人三万円程度。五百人ほどの講演会で、経費は二千万〜三千万円かかると思う」

 最近はインターネット上の講演会が増えているものの、会場形式はまだまだ多い。講師謝金を除く経費が年間百億円を超える社もある。元をたどれば、患者が支払った薬代や私たちの税金、保険料だ。

 別の製薬会社の社員は「忙しい先生に来てもらい、薬の副作用などの必要な情報を周知するため」と話すが、先の社員は「新薬の売り込みのためだ」と話す。

 「高血圧や糖尿病など生活習慣病の薬は各社が発売し、効能にもあまり差がないので、MRとどれだけ顔を合わせたかで差が出る。飲食まで残ってもらえば、医師との距離が近くなるチャンスになる」

 新薬は八年程度は独占的に販売できるが、その後は半値程度の後発薬(ジェネリック)の発売が認められる。製薬会社にとって、それまでにいかに新薬を売るかが収益を左右する。

 神奈川県内のある病院長は「同じような薬なら研究の支援をしてくれたり、処方の面で相談に乗ってくれる企業の薬を使ってあげようと思う」と話す。

 医師五年目の山本佳奈さん(30)は福島県内の病院に勤務当時、一度だけ講演会に行き、その後は参加していない。

 「ただで食事やお酒が出るし、製薬会社の人に丁寧にあいさつされるので若い医師が勘違いしてしまう。毎回行くと、自然とその製薬会社の薬を選ぼうという意識になってしまう。患者本位とはいえない」

◆「安全情報周知へ不可欠」 口そろえるメーカー側

 薬の講演会について製薬会社側は「効能や副作用といった安全情報を伝え、薬の適正使用に不可欠だ」と口をそろえる。

 「メーカー主催の講演会でも、宣伝色を出しすぎると続かない」。日本製薬工業協会の田中徳雄常務理事はそう話す。薬のPRばかりする講演会では医師が集まらないという。

 医療用医薬品製造販売業公正取引協議会の寺川祐一専務理事は「かつては東京・銀座のクラブやゴルフといった高額接待が行われていたようだが、今は単なる娯楽といった接待は行われていない」と説明する。

 二〇一六年度に約六千九百回の講演会を開いた武田薬品工業は「(飲食の提供に)自社医薬品の処方誘引や他剤との差別化につなげる意図はない」と強調。大塚製薬は「適切な情報提供のため、新製品が多い時期は講演会の回数が多くなる傾向がある」と話す。

 過去には新薬の講演会が開かれなかったことによるデメリットもあった。

 東日本大震災直後に発売された抗凝固剤を巡り、震災で学会や製薬会社が講演会を自粛。一般の医師に処方してはいけない患者の情報が伝わらず、抗凝固剤の投与が原因と疑われる出血性の合併症の死者が出たことがあった。

◆ご意見・情報を募集

 シリーズ「税を追う」へのご意見、情報をお寄せください。ファクスは03(3595)6919。メールはshakai@tokyo-np.co.jp、郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「税を追う」取材班へ。

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