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【社会】

東名高速夫婦死亡事故2年 あおり運転、遠い根絶

2017年6月5日夜、東名高速道路で起きたあおり運転事故で、移動される萩山さん夫妻のワゴン車=神奈川県大井町で(一部画像加工)

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 神奈川県大井町の東名高速道路で二〇一七年六月、静岡市清水区の一家が乗ったワゴン車があおり運転で無理やり停止させられ、夫妻が死亡した事故は五日で二年を迎えた。一家のワゴン車を執拗(しつよう)にあおった被告の男は一審横浜地裁で懲役十八年の判決を受け、間もなく東京高裁で控訴審が始まる。夫妻の死は、各地で悲劇をもたらす「あおり運転」を社会問題化させる契機になった。 (沢田佳孝、福島未来)

 あおり運転では、車間を十分に取らない道交法違反(車間距離不保持)容疑を適用するケースが多いが、静岡県警は五月、前を走る車との距離を詰め、クラクションをしつこく鳴らす「あおり運転」をしたとして、暴行容疑で静岡新聞社カメラマンを逮捕した。

 県警はこの事件で、前を走る車の運転手に不安や困惑を与えたと判断し、刑法犯の暴行容疑を初めて適用した。ただ、捜査幹部は「苦肉の策」と打ち明ける。現状では、あおり行為そのものを取り締まる法令はないからだ。

 横浜地裁で昨年十二月にあった東名事故の裁判員裁判は法律上の壁を浮き彫りにした。判決は、男のあおり運転と、夫妻の車を停止させた行為を一体と考えて男の行為と事故の因果関係を認め、自動車運転処罰法違反の危険運転致死傷罪の成立を認めた。

 あおりで停車させる行為は本来、同罪が規定する「危険運転」の類型にはない。停車後の事故にも同罪を適用できるのか。「法の適用範囲を広げ過ぎた」と指摘する専門家もいる。

 あおり運転による悲惨な事故は後を絶たない。堺市で昨年七月、バイクの大学生が死亡した事故で、大阪地裁堺支部はあおり運転後に追突したとして、殺人罪の成立を認め、乗用車を運転していた男に懲役十六年を言い渡した。愛知や福井県でも暴行や傷害容疑で摘発されている。

 静岡県警は昨年一月、全国に先駆けてヘリコプターの活用を始めた。県警ヘリが上空からあおり運転を見つけ、パーキングエリアなどで待機するパトカーに無線連絡する。

 運転中の映像、音声などを記録するドライブレコーダーはあおり運転の捜査に役立つとされる。ドライブレコーダー協議会(東京)によると、一八年度は約三百七十万台を出荷し、東名事故の前年に当たる一六年度の二・五倍に激増した。

 東名事故で息子夫婦を亡くした萩山文子さん(79)=静岡市清水区=は二人の犠牲で、社会は変わるかもしれないと期待していた。「二年たって事故が風化し始めている。あおり運転はなくなっていないし、多分これからも…」と話した。

<東名あおり事故> 2017年6月5日夜、神奈川県大井町の東名高速道路下り線で、静岡市清水区の萩山嘉久さん=当時(45)=一家のワゴン車が大型トラックに追突され、萩山さんと妻友香さん=当時(39)=が死亡、娘2人もけがをした。神奈川県警は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で石橋和歩被告(27)を逮捕。横浜地検は、より罪が重い危険運転致死傷罪などで起訴した。横浜地裁は昨年12月、懲役18年(求刑懲役23年)を言い渡した。

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