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【社会】

介護「特定技能」日本語大丈夫? 低いハードル 戸惑う現場

高齢者の介助をするフィリピン出身の介護福祉士候補生=愛知県田原市で

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 4月に創設された外国人労働者の新たな在留資格「特定技能」の対象14業種の中で、最も多い約6万人の受け入れを見込む介護分野。これまでの制度は日本語で行われる国家試験などの壁が厚く、受け入れは難航してきたが、特定技能で求められるのは入国前の2種類の語学試験だけ。介護現場からは「語学力の要件が低くないか」と懸念の声が出ている。 (武藤周吉)

 「お昼ご飯おいしい?」「うん、ありがとう」

 愛知県田原市の社会福祉法人「福寿園」が運営する特別養護老人ホーム。フィリピンとの経済連携協定(EPA、二〇〇八年発効)に基づき同国からやってきた介護福祉士候補生が、高齢者の介助をしていた。

 福寿園は外国人の働き手受け入れを進める先進施設で、延べ九十人超を採用。介護業界では、団塊の世代が七十五歳以上を迎える二五年度に、三十四万人の労働力不足になると予想される。常務理事の古田周作さん(46)は「彼女たちがいなければ施設は回らない」と語る。

 候補生たちは四年制大学卒が多いが、EPAでは三年以内に日本人と同じ国家試験に受かって介護福祉士にならないと、帰国を余儀なくされる。一七年には外国人が最長五年間在留できる「技能実習」制度も加わったが、在留期間の途中でレベルの高い日本語の語学試験が課されてきた。

 だが、新たに創設された特定技能では、入国前に課される日本語試験と、介護に比重を置いた「介護日本語評価試験」に受かれば、介護福祉士の資格はないものの、現場に「即戦力」として投入される。五年間の在留資格が与えられ、専門家からは「簡単過ぎる」との声が出ている。

 福寿園は三年前から日本語学習や資格取得の支援を専門的に実施しており、国家試験の合格率は七割を超えた。古田さんは要件を緩める新制度の流れを複雑な思いで見つめる。「外国人一人の人材を育てるには、日本人の二倍、三倍の力が必要。長い目で人を育てる受け入れを進めるべきだ」との思いは強い。

 別の施設の施設長も「新制度でどれくらいのレベルの人材が入ってくるか分からない」と戸惑う。

 介護現場に詳しい淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「介護で求められる高齢者のケアはそれぞれ異なり、高い日本語能力は不可欠」と指摘。「無理に受け入れを進めると(外国人を)指導する現場職員の負担が増し、新たな離職につながりかねない」と注意を促す。

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