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【社会】

新幹線殺傷1年 JR東海 全列車に警備員同乗

新幹線の模擬車両を使い、巡回警備の訓練をする警備員=静岡県三島市のJR東海総合研修センターで(JR東海提供)

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 東海道新幹線の車内で昨年六月、乗客の男女三人が無職小島一朗被告(23)=殺人罪などで起訴=に刃物で切りつけられ殺傷された事件を受け、JR東海はこの一年で、警備員を新幹線全列車に同乗させるなど「見せる防犯」を強化してきた。ただ、乗客の手荷物検査の導入について同社は「鉄道の利便性が下がる」として否定的な姿勢を保つ。安全な鉄道に向け、関係機関は模索を続けている。 (榊原智康、佐々木香理、宮崎美紀子)

 「警備員はさらに増強し、密度の濃い警備を実現していきたい」

 五月三十日、JR東海の定例会見で、金子慎社長は車内を巡回する警備員を「ある種の抑止力」と説明。その上で五月末までに全列車で同乗が実現したと強調した。今は途中区間だけの列車もあり、今後は東京−新大阪の全区間に同乗させる態勢をつくり「見せる防犯」を強めていくとした。

 車両には、防護盾や刺股などを搭載。三角巾などの医療用品も充実させた。昨年の事件では乗務員らの情報共有がうまく図れなかった反省点を踏まえ、車掌や運転士、車外の運転指令らが同時に会話できるように、スマートフォンを使った「グループ通話システム」を導入した。金子社長は「訓練を繰り返し、対応力は向上している」と話す。

 国も安全向上対策に乗り出している。昨年十二月、適切に梱包(こんぽう)されていない刃物類の車内持ち込み禁止を明確化するため、鉄道営業法に基づく省令を改正。三月には、東京メトロ霞ケ関駅で「ボディースキャナー」を使い、服の下に隠した危険物を検知する実証実験をした。

 東北、上越、北陸の各新幹線を管轄するJR東日本では、新幹線の全車に防護盾、防刃ベストを搭載。運転士、車掌は目をくらませる強力なライトや催涙スプレーを携行する。東海道新幹線での事件で車掌が身を守るため、シートの座面を外して対応したことを受け、新幹線の座面を脱着可能な設計に変更した。

 新幹線各駅と在来線主要駅には刺股を配備。東京支社は昨年十二月、護身術講習会で刺股を使って初めて訓練した。女性社員も警視庁の指導を受け、刺股で不審者を制止し、後ろから膝を折る方法などを学んだ。

 手荷物検査については、「利便性を阻害する全数検査は難しい」とJR東海と同様に否定的。だが、新しい流れも出てきている。静岡大発のベンチャー「ANSeeN(アンシーン)」が開発した「新幹線改札での手荷物検査装置」を、JR東日本の子会社が、新規事業アイデア募集で高く評価した。

 この装置は特殊なセンサーで荷物の中身を短時間で画像化する。アンシーンの小池昭史社長(34)は「飛行機の手荷物検査は十秒程度かかるが、この技術なら四秒に短縮できる。鉄道の改札を普通に通る時間は二秒ほど。四秒なら混雑は生まれないのでは」とみる。同社は二〇二五年の大阪万博での試験導入を目指し、新幹線での本格導入も視野に入れる。

◆手荷物検査導入の準備を

 鉄道の安全対策に詳しい関西大の安部誠治教授(交通政策論)の話 新幹線車両への警備員配置は、やらないよりはやった方がいいが、全車両に配置するのはコスト的に不可能。現状の対策は発生後の対応中心で、警備員が別の車両を巡回している隙などを突かれ、刃物などによる事件が再発する可能性はある。乗客の利便性が多少は損なわれるかもしれないが、手荷物検査導入に向けた準備を進めるべきだ。

<新幹線殺傷事件> 2018年6月9日夜、東京発新大阪行き「のぞみ265号」(16両編成)の12号車で、乗客の20代女性2人が小島一朗被告になたで切り付けられてけがを負い、止めに入った兵庫県尼崎市の会社員梅田耕太郎さん=当時(38)=がなたやナイフで襲われ殺害された。小島被告は現行犯逮捕され「誰でもよかった」と供述。鑑定留置を経て、昨年11月、殺人罪や銃刀法違反罪などで起訴された。公判はまだ始まっていない。

 

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