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【社会】

「騒音緩衝地に鉄柵」やめて 横田基地周辺国有地 防衛局、明け渡し要求

住民が家庭菜園などにしている騒音緩衝地

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 会計検査院の二〇一七年度の報告で、住民が家庭菜園などに使用していることが指摘された米軍横田基地(東京都福生市など)周辺の国有地について、北関東防衛局が住民百七十人に今年九月末を期限に明け渡すよう求めている。その後、鉄柵で囲う方針だが、半世紀にわたって草刈りなどの管理をしてきた住民らは「囲い込みは住環境の悪化につながる」と方針撤回を訴えている。 (萩原誠)

 住宅街の真上を、米軍機が大きな音で低空飛行する東京都昭島市美堀町。横田基地南側の住宅街には「国有地」の看板が立つ空き地が点在する。花や野菜が植えられているのは、会計検査院が問題視する家庭菜園だ。それ以外にも黒い鉄柵で覆われ、雑草が二メートルほどの高さまで生い茂った空き地もある。

 「これらは単なる空き地ではなく、騒音で住めなくなって出て行くことを余儀なくされた傷痕なんです」。昭島市在住の軍事アナリスト小柴康男さん(73)が切り出した。

 昭島市発行の「基地とあきしま」などによると、横田基地は一九六〇年代、極東戦闘部隊の最重要基地としての性格を強めた。爆撃機の騒音に耐えかねた住民らが移転を国に陳情するなどし、七四年三月までに、約八百四十世帯のうち五百七十世帯が移転した。跡地は国が買い上げ、緑地帯など、騒音被害を和らげる緩衝地帯としている。

 しかし、跡地は雑草が生い茂り害虫が発生したほか、火災が起きたりごみが捨てられたりと環境が悪化。残った住民らは七〇年六月、すさんだ土地を家庭菜園などに利用して自らの手で雑草の繁茂などを防止したいと市に要望した。市は国と折衝し、許可される方向に傾きかけたが、結局許可は下りなかった。

 今回、北関東防衛局が鉄柵で囲うと住民らに通知したのは計二万六千平方メートルの国有地。同局は「除草などに努めてきたが十分と言えない状況もあり、住民が雑草防止のため菜園など無断使用を始めた」とし「使用料などの調整が付かずに使用許可に及ばず、現在に至っている」と説明する。空き地で野菜を育ててきた男性(70)は「昨年まで国から使うなと言われたことはなかった」と困惑する。

 今回の動きについて、小柴さんは「オスプレイの配備など横田基地機能強化に向け、住環境を悪くして空白地帯を固定化し、実質的な基地拡張をやろうという思惑が働いているのでは」といぶかる。一方、北関東防衛局は「会計検査院の指摘を受け、無断使用の解消に向けチラシの戸別配布などで住民に働き掛けてきた」とし、今後について「使用を希望する住民に対し、公募により透明性、公平性を確保した上で、有償で使用許可することを検討していく」とする。

 住民らは今年四月に「住みよい美堀町を求める会」をつくり、国への対応を検討している。市も「住民の事情を酌み、国には慎重な対応をお願いしたい」とする。会長の小柴登志江さん(73)は「地域が分断されて環境も悪化し、おりで囲われたようになり人間の住む街ではなくなる。鉄柵の設置はしないで」と願う。

住宅地に点在する、鉄柵で囲まれた騒音緩衝地帯=いずれも東京都昭島市で

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