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【社会】

無給医、50病院に2100人 大半雇用契約なし 大学病院、研究名目で診療

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 文部科学省は二十八日、労働として診療を行っているのに給与が支払われない「無給医」が、五十の大学病院に計二千百九十一人いたと発表した。調査対象とした医師約三万二千人の7%に上るが、まだ各大学が精査中の医師が千三百四人いて、人数がさらに増える可能性がある。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険も未加入だった。各大学は文科省の指導に基づき、給与の支払いや雇用契約の締結を進める。 

 大学病院には、大学院生らのほか、自己研さんや研究目的の医師が在籍し、その一環で診療に携わる場合には給与を支払わない慣習が広く存在する。今回の調査では、診療のローテーションに組み込まれていた場合などを実質的な労働だったとし、給与の支払いがない医師を無給医とした。判断は各大学が専門家らに相談して行った。

 調査は一〜五月、国公私立九十九大学の百八付属病院に在籍する医師と歯科医師を対象に実施。昨年九月に診療に従事した計三万一千八百一人(教員や初期研修医を除く)について、同月の給与の支給状況などをまとめた。

 無給医と確認された二千百九十一人のうち、合理的な理由なく給与を支払っていなかったのは五十病院のうち二十七病院の七百五十一人。契約上は週二日なのに実際は週四日診療しているような例も含まれ、最大二年間さかのぼって支払う。

 残る千四百四十人は五十病院のうち三十五病院に所属し、無給の合理的な理由はあるが、診療の頻度や内容を踏まえて今後は給与を支給する。これらとは別に、六十六病院の三千五百九十四人が、ほかの所属先から大学病院で働いた分も含めて給与を受け取っているなど、合理的な理由があり給与を支給しない現状を維持するとした。

 病院別では、無給医が最も多かったのは順天堂大順天堂医院の百九十七人(対象者の46%)で、北海道大病院百四十六人(同24%)、東京歯科大水道橋病院百三十二人(同62%)が続いた。昭和大歯科病院は百十九人、愛知学院大歯学部病院百十八人で、それぞれ対象者全員が無給医だった。

 無給医かどうか精査中の千三百四人の内訳は、日本大板橋病院三百二十一人、東大病院二百三十九人、日大歯科病院二百十一人、慶応大病院二百人など。全対象者のうち、合理的な理由なく雇用契約を結んでいなかった医師は千六百三十人、労災保険の対象外だったのは千七百五人だった。

 多くの無給医は深夜や休日に、別の医療機関でアルバイトなどをして生活費を得ており、過重労働による診療への悪影響などが懸念されている。

◆医療事故の責任あいまいに

<全国医師ユニオンの植山直人代表の話> 文部科学省の調査は大学病院に報告を求める形で実施され、病院によって調査手法や無給医かどうかの判断に違いがある。今回明らかになった結果は氷山の一角で、実際はもっと多いだろう。いくら研修や研究のために病院にいるといっても、免許を持つ医師が診療をし、病院が報酬を得ている以上は賃金が払われるのが当然だ。加えて、雇用契約がなければ、労働時間の管理もなされず、医療事故が起きた際に責任の所在があいまいになることで患者の不利益にもなりかねない。早急な改善が必要で、国もフォローアップしていくべきだ。

<無給医> 大学病院などで実質的に労働の実態があるのに、給料が支払われていないと判断された医師。病院の人件費が限られているため、便宜的に無給とされたり、一部しか支払われなかったりするケースがある。(1)大学院生らが教育や研修名目で働かされる(2)契約した以上に勤務に入れられる−など、形態はさまざま。病院で診察や病棟管理を担う一方、生活費を稼ぐために深夜や休日にアルバイトをして、過労死した医師もいる。

 

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