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【社会】

過労 無給医 医療事故のリスク警鐘も

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 文部科学省の調査で、労働実態がありながら給料が払われていない「無給医」が、全国で二千人以上いることが明らかになった問題。多くが大学病院の仕事をしつつ、生活のためアルバイトに追われる。雇用契約がなく、労災や医療事故の責任があいまいなケースまで発覚。長年の医療界の慣習に「やむを得ない」と語る経験者もいるが、過去には過労が影響し、死亡した例もあった。患者や医療の質への影響が懸念される。

 「バイト先でカルテを書く途中、パソコンに突っ伏して寝てしまった」。数年前、東京都内の大学病院で、給料なしに働いていた女性医師(32)は振り返った。

 国家試験合格後、二年の初期研修を終え、学位と専門医の資格を目指して大学院へ。年間百万円超の学費を支払いながら、大学病院の仕事をこなした。

 給料が保障されていた研修医時代とは一変。大学病院では医師としての仕事が週五〜六日びっしりとあり、手術が終わる深夜まで待機したことも。生活費のため、別の病院の外科や救急でバイトをして、当直明けに大学院の講義を受けた。本分である研究や論文執筆は、土日や深夜にするしかなかった。

 体力的に耐えられず、五年次で退学。しかし、こうした待遇に「ある意味、仕方がない」という思いが強い。教授や先輩はもっと厳しい仕事をしており、「修業の身だから、食べる分はバイトで稼ぐしかない」と話す。

 医療関係者によると、無給医のほとんどが大学病院で勤務する。若手医師は学位や資格取得に必要な経験を積み、大学側はコストをかけず、人手を確保できる。若手は大学から紹介された病院でバイトをして、生活費をまかなう。

 子育て世代の無給医は「学生の身分で、保育園の入園希望が通らない」と漏らすが、将来の人事やバイトの紹介に影響する可能性があり、表だって声を上げられない。

 文部科学省は二〇〇六年から、国会議員の働きかけを受け、診療に従事する大学院生に対象を絞り、雇用契約の有無を調査した。ところが一三年、契約率100%との結果を得て、一六年を最後に調査していなかった。昨年の一部報道を受け、改めて調査に着手。担当者は「雇用契約がある以上、給料が支払われていると考えていた」とし、柴山昌彦文科相は「従前の調査は表層的だったのかなと思う」と述べた。

 無給でなくとも、数百円程度の時給で長時間働く大学病院の医師は少なくないという。こうした医師について、NPO法人医療ガバナンス研究所の上(かみ)昌広理事長は「メリハリなく働き、医療事故のリスクが高くなる」と指摘する。

 

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