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【社会】

憲法身近に 市民の映画 五日市憲法テーマ 西多摩の心意気

映画「みんなの憲法」を製作した羽村幸子さん(前列右から2人目)ら出演者やスタッフ=東京都羽村市で

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 「憲法をみんなの問題として考えて」−。東京都羽村市など西多摩地域の人たちが、明治期に地元で生まれた民間憲法草案「五日市憲法」を題材にした手作りの短編映画「みんなの憲法」を完成させた。安倍晋三首相が改憲の動きを見せる中、多くの人たちが憲法を考えるきっかけになればと、若者にも気軽に見てもらえる内容を心掛けたという。 (萩原誠)

 映画は、主人公である高校二年の女の子が憲法に関する宿題をしている場面から始まる。スマートフォンで調べても納得できず「憲法って何?」「誰が作ったの?」と思わず声を上げる。すると、五日市憲法の起草者千葉卓三郎(一八五二〜八三年)が登場。五日市憲法の成り立ちなどを、資料映像を交え、分かりやすく解いていく。

 一九六八年に旧五日市町(現あきる野市)で五日市憲法を発見した元専修大教授の新井勝紘さん(74)も出演。女の子のインタビューに「日頃、何げなくしていること、やりたいことを誰からも邪魔されず自由にできるのは憲法があるから。何のために、誰のために憲法があるのか、若い人たちも勉強して理解して」と訴える。

 製作したのは、市民グループ「憲法を勉強する会」。羽村市内で古本喫茶を営んでいた羽村幸子さん(50)が知人らに呼び掛け、昨年四月に発足した。メンバーは約十五人で、弁護士を招いた勉強会や、若い人たちに憲法をどう伝えていくかの議論も続けている。

 羽村さんは新井さんの著書を読み「五日市憲法を題材にすれば、地域の歴史、憲法の歴史も勉強することになり、身近に感じるのでは。映像化すれば若い人にも伝わる」と映画製作を思い立った。「改憲は国民全体に関わる問題なのに、賛成、反対を含めて一部の人しか盛り上がっていないのでは」との危機感があった。

 会に所属する劇団関係者と協力し、シナリオ、撮影、編集と自分たちだけで手掛けた。「伝えたいことが多過ぎて編集に苦労した」(羽村さん)というが、今年四月末に四十分弱の映画が完成した。

 映画は、新井さんや地元中学校の元社会科教師らの監修で史実を踏まえた。完成した映画を見て新井さんは「若い人たちに伝えようという情熱を感じた。憲法の大事さが広く伝えられる映画になった」と評価し、「私が五十年間やってきたことが少しは役に立つのかな」と喜ぶ。

 今後は公民館などで上映会を開くほか、依頼があれば無償で貸し出す。羽村さんは「改憲に中立的な立ち位置で、まず憲法を理解しようと作った。しっかり自分の頭で考えるために憲法と向き合うきっかけになれば」と話している。

<五日市憲法> 明治期の自由民権運動が盛んだった時期に全国で作られた民間の憲法私案の一つ。現在のあきる野市立五日市小学校の前身である勧能学校教員を務めた千葉卓三郎が地元の青年と議論を重ね、1881年ごろに作成した。正式名は「日本帝国憲法」。204条あり、国民の権利保障など現憲法に通ずる内容が随所に盛り込まれている。1968年、五日市町(現あきる野市)で旧家の土蔵を調査していた東京経済大のゼミ生だった新井勝紘さんが見つけた。

映画「みんなの憲法」の一場面=憲法を勉強する会提供

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