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【社会】

芥川賞、今村夏子さん 直木賞、大島真寿美さん

直木賞に決まった大島真寿美さん(左)と芥川賞の今村夏子さん=17日、東京都千代田区で

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 第百六十一回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が十七日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は今村夏子さん(39)の「むらさきのスカートの女」(小説トリッパー春号)、直木賞は大島真寿美さん(56)の「渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂結(たまむす)び」(文芸春秋)に決まった。

 今村作品は、いつも紫色のスカートをはき、周囲の住民から変人扱いされている女性と友達になりたがっている「わたし」の視点で描かれる中編。物語が進むにつれ、女性に執着する「わたし」の異常性が浮かび上がってくる。

 選考委員の小川洋子さんは「文句なしの決定。今村さんは狂気を突き抜けた先にある、独自の哀れさみたいなものを描ける人だと再認識した」と絶賛した。

 大島作品は、江戸中期に活躍した浄瑠璃(文楽)作者、近松半二の生涯を描いた長編。歌舞伎に押され、苦境にあった浄瑠璃の世界で、起死回生を目指して大作に取り掛かる半二らが、虚実の渦にのみ込まれていく様子を描いている。

 選考委員の桐野夏生さんは、今回の候補作の水準がいずれも高く、票が割れて選考は長引いたと説明。その中で大島作品は「柔らかな大阪弁の語り口がすばらしい。近松半二の著述を巡る戦いがとてもリアルに書かれ、同じ実作者として分かる、という声もあった」と述べた。

 賞金各百万円。贈呈式は八月下旬に東京都内で。

    ◇

 芥川賞・直木賞に決まった二人は十七日夜、東京都内で記者会見した。芥川賞の今村さんは緊張した面持ちで登壇し「(芥川賞は)手の届かない、一生取れないものだと思っていた。本当に驚いたし、うれしいです」と感激を語った。

 デビューから九年の苦労を聞かれると、「小説を書くことはつらいし、嫌だと思うときの方が多い」としつつも「集中して書いていると自分がなくなる感じがある。その一瞬の楽しさが味わいたくて書いている」とほほ笑んだ。

 直木賞の大島さんは引き締まった表情で「びっくりしている。あまり実感がない」。受賞作について「語りを書くのが気持ち良かった」とし、「この世界をまた書きたい」と決意表明。「文楽は本当にすばらしい芸術だし、次の世代にちゃんと残していかなければならない。皆さんに見てもらえる手助けができれば」と語った。 (松崎晃子、小佐野慧太)

<いまむら・なつこ> 1980年、広島市生まれ。2010年の太宰治賞受賞作を改題した「こちらあみ子」で11年、三島賞。大阪市在住。

<おおしま・ますみ> 1962年、名古屋市生まれ。92年に「春の手品師」で文学界新人賞。11年の「ピエタ」が本屋大賞3位。同市在住。

 

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