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【社会】

噴き出す炎「助けて」 京都アニメ放火 住宅街に爆音 住民「地獄絵図」

放火火災で煙を上げる「京都アニメーション」のスタジオで、消火活動に当たる消防隊員ら(奥)=18日午前、京都市伏見区で(近隣住民提供)

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 窓から赤い炎と黒い煙が立ち上り、ガラスの割れる音に叫び声がまざった。「助けて」。京都市のアニメ制作会社のスタジオに放火された十八日の火災。近所の住民はけが人に水を飲ませ、救助する人も。生み出す作品は人気を集め、各地の町おこしにも貢献してきた。身柄を確保された男(41)は「パクりやがって」との言葉を口にしたが、動機は分からないまま。「息子と連絡が取れない」。ひたすら無事を祈る、安否不明の社員の家族。被害者を支援する声は海外でも広がった。

 「ライターを使った」。アニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオに火を付けたとみられる男(41)は息が絶え絶えになりながらも、取り囲んだ警察官にそう語った。血だらけであおむけに倒れ、服から煙が上がっていた。直前に起きた爆発。いち早く駆け付けた住民は「地獄絵図」と語った。何が起きたのか。取材から再現した。

 「ドン。バン」。十八日午前十時半ごろ、京都市伏見区の静かな住宅街にある三階建てのスタジオで、倉庫が倒れたような激しい音が何度も上がった。近くの住宅展示場にいた三十代の男性社員は慌てて外に出た。

 「助けて」「きゃー」。建物から悲鳴が聞こえた。砕け散った窓ガラス。二階から真っ赤な炎が噴き出し、すさまじい勢いで黒煙が上がっていた。一階の窓から、若い複数の女性がすすにまみれた姿で飛び出してきた。別の二十代の男性社員は「おら」と、もみ合うような声を聞いたという。

 二階と三階の間くらいの外壁には、若い男性が必死にへばりつき、飛び降りることができず、助けを求めていた。約十人がかりで、はしごや毛布を使って救助。男性はタオルで口を押さえ、放心した様子で燃え続ける建物を見ていた。

 午前十一時ごろ、パトカーや消防車が次々と到着。二階に向かって放水したが火の勢いは収まらず、窓ガラスがバラバラと落ちていった。逃げようとしたのか三階と屋上をつなぐ階段では、多くの人が折り重なるように倒れていた。

 一方、午前十時三十五分ごろ、スタジオから約八十メートル離れた家に住む女性(61)はインターホンの音に気付いた。玄関を出ると誰もおらず、左側の敷地を見ると、がっちりした体格の男が倒れていた。

 Tシャツに青いジーンズ。ジーンズの膝の下は焼け落ち、はだしで血だらけ。ちりちりに焼けた髪に土色の顔。両腕の皮はむけ、服に小さな火が付いていた。庭にあったホースで水を掛け「大丈夫?」と尋ねたが、反応はなかった。

 救急車はなかなか来ず、集まってきたのは警察官。「おまえ、何でそんなことしたんだ」。そう聞かれると「パクりやがって」と答えた。「多目的ライターを使った」と説明し、警察官が敷地から連れ出していった。玄関や倒れていた場所の周辺には血の足跡がいくつも残っていた。

 女性は「(男は)世の中全般に恨みがあるような言い方で、警察の対応にも怒っている感じ。怒りを出したいけど、体がつらくて出ないようだった。京都アニメーションにも恨みを持っているようだった」と話した。

◆連絡取れず 親族ら悲嘆

 激しい爆発音が何度も響き、ものすごい量の黒煙が住宅街を包み込んだ。血だらけになり、ひどいやけどを負った人たちが次々と搬送された。現場や会社には社員の親族が駆け付け、安否が分からない状況に悲嘆に暮れた。

 孫の二十代女性が入社二年目の社員という岡田和夫さん(69)=京都府木津川市=は火災の情報を聞き、現場に急行。孫に連絡したがつながらず、調べてみると、搬送者ではなく、行方不明者のリストに名前が。「最後に会ったのは一週間前。完成した映画に自分の名前が載って喜んでいた。今は気が動転しており、犯人に対しての気持ちも言葉にできない」と涙ぐんだ。

 京都府宇治市の本社には娘と息子が働いているという夫婦が訪れ「娘は東京に出張していて無事なようだが、息子と連絡が取れない」と嘆いた。

 

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