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【社会】

京アニ放火 安否不明 娘は孫は…焦る心

今月公開のアニメ映画をPRする展示物に添えられた津田幸恵さんのメッセージ=20日、大阪市で

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 アニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオ放火事件で、亡くなった三十四人は全員が同社の従業員とみられているが、身元はまだ明らかになっていない。大切な娘や孫と連絡が取れず、不安や焦燥感を募らせる家族たち。震える声で、思いを語ってくれた。

 「細かい作業も手を抜かず、こつこつ取り組む根性の塊のような子だった」。安否の分からない社員津田幸恵(さちえ)さん(41)の父伸一さん(69)=兵庫県加古川市=は、娘の仕事ぶりを誇りにしてきた。家族や友人を気遣える優しい性格で、伸一さんは「待つしかない」と話す。

 子どもの頃から絵を描くのが大好きだった。約二十年前にアニメの専門学校を卒業し、同社に就職すると彩色一筋。カラーコーディネーターの資格を持ち「名探偵コナン」や「クレヨンしんちゃん」といった国民的作品の作業にも携わった。

 スタッフとしてテレビに名前が映し出されることもあった。伸一さんと妻は、録画した番組の画面を止めて何度も見入った。「文句一つ言わず、いつも仕事が楽しそうだった。良い会社なんだろうな」と思ってきた。

 幸恵さんと最後に会ったのは二カ月前。「忙しくなるから、今年は盆と正月も帰ってこられへん」。ふらりと実家に顔を見せた。昨年二月に妻を亡くした伸一さん。「様子を見に来てくれた」と思えてうれしかった。

 事件を知ったのは十八日午後二時ごろ。幸恵さんが働くスタジオが燃えているニュース映像を目にした。「これは駄目だ」。京都府警に尋ねても安否は不明。「幸恵の状態を見ないと気持ちに区切りが付かない」。今はDNA型鑑定の結果を待つ。

 十九日、京都市内の幸恵さんのアパートで、安否を確かめに東京から訪れた女性と会った。声優のライブに行く仲間と名乗った。孤独に苦しんだことがあるといい「幸恵さんに助けられた」と打ち明けられた。

 「話が合えば自然と仲良くする、そういうことが当然のようにできる子」。伸一さんはかみしめるように語った。

 今月公開のアニメ映画をPRする展示物には「真っ直ぐ夢へと向かう彼らの姿 劇場でお楽しみ下さい」という幸恵さんのメッセージが添えられている。

 

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