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【社会】

京アニ放火 ガソリン直接かける 容疑者侵入直後、複数人に

「京都アニメーション」の男性社員が描いた第1スタジオ2階の見取り図。左側のベランダから飛び降りた

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 京都市のアニメ制作会社「京都アニメーション」第一スタジオで三十四人が死亡した放火殺人事件で、青葉真司容疑者(41)は建物に侵入後、バケツに入れたガソリンを近くにいた複数の従業員に直接浴びせていた疑いがあることが、捜査関係者への取材で分かった。目撃情報があるという。京都府警は強い殺意を持って放火した可能性があるとみて調べている。

 府警によると、青葉容疑者は一階のらせん階段そばで「死ね」と叫びながらガソリンをまいたという。

 火災前日の十七日、京都府宇治市のホームセンターでガソリン携行缶などを購入後、荷物を載せた台車を約十キロにわたって押して歩き、複数のスタジオや本社など現場周辺を下見していたことも判明した。

◆煙充満決死の飛び降り 2階から脱出の男性、恐怖の現場

 「逃げなあかん」。同僚の悲鳴が響き、墨のような黒煙が一気に迫る中、決死の覚悟で飛び降り一命を取り留めた。「京都アニメーション」の放火殺人事件で、二階から脱出し、けがを負った男性社員(52)が当時の恐怖を振り返った。

 事件当日の十八日、男性は朝から二階の仕事場で背景画を描いていた。当時、フロアには二十〜三十人の社員がいた。「キャー」。午前十時半ごろ、突然もみ合うような音とともに女性の悲鳴が上がり、「ダダダダ」と大型バイクのエンジン音のような衝撃音が。「火事だ」。一階から駆け上がってきた社員が叫び、防犯ベルの音が鳴り響いた。

 十数秒後、吹き抜けのらせん階段から、墨のような黒煙が一気に噴き出し充満、すぐに視界が失われた。「逃げなあかん」。勘を頼りに姿勢をかがめ、必死で数メートル先のベランダへ出ると、先にいた十数人の同僚が身を乗り出し「助けて」と叫んでいた。

 約五メートル下の地上を見ると、火だるまになって歩く人や、着地に失敗し倒れている人の姿が。「このまま煙にまかれ命を落とすか、飛び降りて大けがをするか」。極限の選択を迫られる中、下にいた男性からの「大丈夫ですよ。飛び降りられます。いけます!」と励ます声が背中を押した。無我夢中で飛び降り、両腕を打ったが軽傷で済んだ。

 男性は約三十年前、京アニに入社。作品が国内外から少しずつ評価を得て成長していく様子を見てきた。「蓄えてきたノウハウや、金に換えられないものが一瞬で奪われた」と悔しさをあらわにする。

 入院中の青葉真司容疑者(41)については「『よくもやったな』という思いだ。何で京アニを狙ったのかが解明され、法の裁きを受けるのを待つだけだ」と怒りを抑えるように語った。

 連絡の取れない同僚には公私ともに仲の良かった人もいる。制作中の資料も焼けたとみられ、失ったものは大きい。「何とか立ち直って、従来通りのクオリティーの作品をつくっていきたい。それが亡くなった仲間の手向けにもなるはずだ」

 

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