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【社会】

孤独死と向き合って 板橋の遺品整理人 ミニチュアで表す人生

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 孤独死の現場を再現したミニチュアを作る遺品整理人がいる。東京都板橋区の小島美羽(みゆ)さん(26)は700を超える現場に立ち合ってきた。「孤独死がひとごとではないと知ってほしい」と、布団に残る染みも散乱したごみもそのまま表現する。 (中村真暁)

 多くの時間を布団の中で過ごしたのだろうか。倒れたカップ酒や、かびが生えたコンビニ弁当、雑誌などが、人の形が染み付いた布団から手の届く範囲に散乱している。両手に載せられるほどの小さな箱に、孤独死の生々しい世界がある。

 このミニチュアは死後三〜六カ月後に、五十〜六十代の男性が見つかった部屋との想定。小島さんが清掃する中で、最多のタイプという。新聞や雑誌、弁当のラベルまで細かく表現する。故人のプライバシーに配慮し、複数の現場の特徴を組み合わせる。

 小島さんの父も五十四歳で亡くなった。別居中の母が偶然、自宅で倒れていた父を発見。運ばれた後に亡くなったが、孤独死寸前だった。何もできなかった自分を悔やみ「そんな経験をした私なら、遺族の悲しみを和らげられるかもしれない」と、二十二歳で遺品整理の依頼も引き受ける特殊清掃会社に入った。

現場をミニチュアで再現する小島美羽さん=東京都板橋区で

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 訪ねた現場はさまざまだ。部屋にあふれるごみの中から見つかった中年女性、大きな屋敷に住むお金持ち、二十二歳の若者もいた。遺品整理中に遺族と一緒に目を腫らし、故人の思い出を聞くことがあれば「遺品は全て捨ててくれ」とクールに言われることも。部屋の数だけある人生に「孤独死は特別ではない」と思いを強めた。

 だが、報道される機会は少なく、世間の関心の低さが気になった。「ミニチュアならリアルになりすぎずに共感してもらえるかも」と挑戦した。

 ペットボトルや浴槽などは自作した型に樹脂を流し込んで作る。発泡スチロールやプラスチック板など、ホームセンターで買える材料も駆使し、空き時間を利用して試行錯誤を重ねた。三年前、葬祭事業者が集まる展示会で並べると、評判を呼んだ。

 これまでにごみ屋敷、発見が遅れがちなトイレ、風呂場、「ゴメン」と粘着テープが壁に貼られた自殺現場などの九部屋を制作した。状況や特徴の質問には、故人に心を寄せて丁寧に説明する。

 経験した現場で、発見まで最も長かったのは二年。「人との関わりがないと、発見が遅れる。無くすことは難しいが、自分にも起こり得るのだと知り、今を大切にしてほしい」

 小島さんがミニチュアの写真を掲載し、自身の思いをつづった著書「時が止まった部屋」(原書房)は、二十日に出版される。

細かい部分まで再現されたミニチュア

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細かい部分まで再現されたミニチュア

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