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【社会】

表現の不自由展 不快感で中止許されない 日体大・清水教授に聞く

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 愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が開幕から三日間で中止に追い込まれた。憲法で保障する「表現の自由」の観点から、日本体育大の清水雅彦教授(憲法学)に一連の経過の問題点を聞いた。 (清水俊介)

 −憲法二一条に定める「表現の自由」とは。

 「国家が気に入らない言論をいくらでも規制できた戦前の反省から、日本国憲法は『表現の自由』を全面的に保障している。ただ野放しではない。自分と他人の権利・自由がぶつかって相手が優先する場合に、自分の権利・自由が制限される。他人の名誉やプライバシーを侵害するならば、その表現は規制される」

 −慰安婦を象徴する少女像の展示が問題視された。

 「河村たかし名古屋市長は『国民の心を踏みにじる行為だ』と言ったが、少女像の展示は特定の日本国民の権利・自由を侵害するものではない。価値観の違う言論や表現を目にした場合の不快感にすぎない。単なる不快感で展示させないなんて許されない」

 −河村氏は展示の撤回を求めた。

 「表現の自由に対する弾圧行為だ。憲法九九条で公務員には憲法尊重擁護義務があるのに、そういう発想がない。名古屋市民は深刻に受け止めてほしい」

 −展示は国益を害するとの批判もある。

 「国益を害する表現は制限してもいいという考えは二〇一二年の自民党改憲草案に通底する。草案は人権制約について、現行憲法が『公共の福祉に反しない限り』としているものを『公益及び公の秩序に反しない限り』に変更している。国家の安全や社会秩序が優先する場合、人権制限してもいいという考え方だ」

 −菅義偉(すがよしひで)官房長官は補助金交付の決定について「精査する」と発言した。

 「二一条二項で禁止する『検閲』は、行政が事前に表現を審査し、その表現をさせない行為。今回は厳密に言えば『検閲』ではないが、表現規制につながる意味では似たような性格がある。お金の関係でああいう発言をしたら、政府に対して批判的な表現活動はしてはいけないのかという意識が生まれ、萎縮効果をもたらす。不適切な発言だ」

 −主催者はどう振る舞うべきか。

 「本来行政がやるべきことは、表現の抑圧行為に対して、表現を守ること。抗議電話への対応が大変だから、一時的な展示中断はやむを得ないが、体制を整えた上で再開してほしい」

<しみず・まさひこ> 札幌学院大教授を経て、現職。市民団体「九条の会」世話人。53歳。兵庫県出身。

 

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